・・・これは氏のロシア文学に対する博識を裏書きするだけのものだ。僕が「大観」の一月号に書いた表現主義の芸術に対する感想の方が暗示の点からいうと、あるいは少し立ち勝っていはしないかと思っている。 とにかく片山氏の論文も親切なものだと思ってその時・・・ 有島武郎 「片信」
・・・A あれは尾上という人の歌そのものが行きづまって来たという事実に立派な裏書をしたものだ。B 何を言う。そんなら君があの議論を唱えた時は、君の歌が行きづまった時だったのか。A そうさ。歌ばかりじゃない、何もかも行きづまった時だった・・・ 石川啄木 「一利己主義者と友人との対話」
・・・農民の暴動や大ストライキに××が出動するのは、それを裏書きする一つの証拠である。 そこで、そういう、帝国主義的、――軍国主義的実質を曝露し、労働者農民大衆に働きかけ、大衆をして×起させることは、プロレタリア文学の任務である。これは、戦争・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・これについては世界中の信用のある学者の最大多数が裏書をしている。仕事が科学上の事であるだけにその成果は極めて鮮明であり、従ってそれを仕遂げた人の科学者としてのえらさもまたそれだけはっきりしている。 レニンの仕事は科学でないだけに、その人・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・これはここの仮説を裏書する。 こんな事を考えていたのであるが、今年の夏房州の千倉へ行って、海岸の強い輻射のエネルギーに充たされた空間の中を縫うて来る涼風に接したときに、暑さと涼しさとは互いに排他的な感覚ではなくて共存的な感覚であることに・・・ 寺田寅彦 「さまよえるユダヤ人の手記より」
・・・この際吾人の行為に裏書きする根拠はいずこにありやというに、第一にこれら要素の空間的時間的分布が規則正しきという事なり。換言すれば、これら要素の時間的空間的微分係数が小なりという事なり。これが小なる時に等温線や等圧線は有意義となり、これに物理・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・また苦心の年月の長かったこと自身がその発明の巧妙さを裏書きするかのごとき暗示がほのめかされている。しかし実際には多くの場合にこういう発明はかなり不完全なものであったり、実は新しくもなんでもないものであったりする。今の科学的な利器は単に独創的・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・学理通り飛行機が自分を乗せて動いてくれたところで、始めて形式に中味がピッタリ喰っついている事を証明するのだから、経験の裏書を得ない形式はいくら頭の中で完備していると認められても不完全な感じを与えるのであります。 して見ると、要するに形式・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
・・・たとえば労働組合の婦人部の人たちの要求の必然性がこういう事件に裏書されております。大河内氏もいわれたとおりいろいろの社会的施設の不備について改善を要求する発言をしていろいろの行動をしているのです。デモとかストライキをする。しかし権力はそうい・・・ 宮本百合子 「浦和充子の事件に関して」
・・・この判断がどんなに正当かという裏書は現に農林省の官吏たちが職員大会を開いて食糧の人民管理を叫んでいる。これらのその道の人達は自分たちの職域を通じて農林省、農会、営団を貫くからくりに通暁しているからこそ、公正な人民管理を主張しているのである。・・・ 宮本百合子 「女の手帖」
出典:青空文庫