・・・ 要するにこれらのモンタージュの要訣は、二つの心像の識閾の下に隠れた潜在意識的な領域の触接作用によってそこに二つのものの「化合物」にも比較さるべき新しいものを生ずるということである。 識閾の上層だけでつながったものは、つまり一つの静・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・を尊重したのみならず、それをもって致富の要訣と考えていたことも彼の著書の到る処に窺われる。例えば『永代蔵』の中では前記の紅染法の発明があり、「工夫のふかき男」が種々の改良農具「こまざらへ」「後家倒し」「打綿の唐品」などを製出した話、蓮の葉で・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・肝心の要訣がぼかしてある場合が多いのは著者の故意か不親切かひとり合点かわからない。芸術家も同様に科学者も自分のしていることの妙所を認識できないためかもしれない。 結局自分に入用なものは、品物でも知識でも、自分で骨折って掘り出すよりほかに・・・ 寺田寅彦 「錯覚数題」
・・・ こんな空想はどうでもよい事にして、平凡な実際問題として見た時にも、数学の学習と語学の学習とは方法の上でかなり似通った要訣があるようである。 語学を修得するにまず単語を覚え文法を覚えなければならない。しかしただそれを一通り理解し暗記・・・ 寺田寅彦 「数学と語学」
・・・これが映画の要訣であると同時にまた俳諧の要訣でなければならない。 取り合わせる二つのものの選択の方針がいろいろある。それは二つのものを連結する糸が常識的論理的な意識の上層を通過しているか、あるいは古典の中のある插話で結ばれているか、ある・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・ゆえに、学校を建つるの要訣は、この得失を折衷して、財を有するものは財を費し、学識を有するものは才力を尽し、もって世の便利を達するにあり。 そもそも文学と政治と、その世に功徳をなすの大小いかんを論ずるときは、此彼、毫も軽重の別なし。天下一・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
出典:青空文庫