・・・また、いかなる盗賊にても博徒にても、外に対しては乱暴無状なりといえども、その内部に入りて仲間の有様を見れば、朋輩の間、自から約束あり、規則あり。すなわちその約束規則は自家の安全をはかるものより外ならず。しかのみならず、この法外の輩が、たがい・・・ 福沢諭吉 「教育の目的」
・・・それは県の規則が全級の三分の一以上参加するようになってるからだそうだ。けれども学校へ十九円納めるのだしあと五円もかかるそうだから。きっと行けると思う人はと云ったら内藤君や四人だけ手をあげた。みんな町の人たちだ。うちではやってくれるだろうか。・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・り白い柱とが、ちらっと窓のそとを過ぎ、それから硫黄のほのおのようなくらいぼんやりした転てつ機の前のあかりが窓の下を通り、汽車はだんだんゆるやかになって、間もなくプラットホームの一列の電燈が、うつくしく規則正しくあらわれ、それがだんだん大きく・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・ ところがそのころどうも規則の第一条を用いないものができてきました。あの河原のあちこちの大きな水たまりからいっこう魚が釣れなくなって時々は死んで腐ったものも浮いていました。また春の午の日の夜の間に町の中にたくさんある山椒の木がたびたびつ・・・ 宮沢賢治 「毒もみのすきな署長さん」
・・・「あんな巡査じゃだめでさあ、あのお神明さんの池ね、あすこに鯉が居るでしょう、県の規則で誰にもとらせないんです。ところが、やっぱり夜のうちに、こっそり行くものがあるんです。それぁきっとよく捕れるんでしょう。バキチはそれをきいたのです。毎晩お神・・・ 宮沢賢治 「バキチの仕事」
・・・「工場学校では、若い生徒の体が健康に成長するように、三十分起立して作業すると、十五分は腰かけて仕事をする規則なのです」ソヴェトの世の中になってこそ、ほんとに若い男女の勤労者の幸福はくるのだ。つよくそう思わずにいられなかった。私はドイツで・・・ 宮本百合子 「明るい工場」
・・・それまでは闊達であった婦人の政治的活躍も様々の法令や規則で禁止されるようになったし、所謂筆禍によって投獄される新聞人はこの前後に目立って多数になって行った。日本の開化期の文化に関係ある統計のあるものは極めて意味深く近代日本というものの本質を・・・ 宮本百合子 「明日への新聞」
・・・きのうのNHKは、警視庁の役人をマイクに立たせて、減刑運動をとりしまる規則はないし、減刑運動の背後にある思想も言論の自由の立場からとりしまることができない。減刑運動は全国的にひろがってゆく模様だが、国民の冷静な判断にまつよりしかたがない、と・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
・・・風俗を壊乱する芸術と官吏服務規則とは調和の出来ようがないと云うのだろう。」「なるほど、風俗壊乱というような字があったね。僕はそうは取らなかった。芸術と官吏というだけに解したのだ。政治なんぞは先ず現状のままでは一時の物で、芸術は永遠の物だ・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・どんな複雑な論理をも容易く辿って行く人が、却って器械的に諳んじなくてはならぬ語格の規則に悩まされたのは、想像しても気の毒だと、私はつくづく思った。 満州で年を越して私が凱旋した時には、安国寺さんはもう九州に帰っていた。小倉に近い山の中の・・・ 森鴎外 「二人の友」
出典:青空文庫