・・・明治二十九年草稿明治三十二年訂正 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・ 発表当時、会話が棒ではじまっていたり、くせのあるてにをはがつかってあったりした部分は、不必要な漢字と一しょにこのたび訂正されている。当時伏字にされて今日ではうずめられないところは、その要旨を附記してそのままにされている。終りには「社会・・・ 宮本百合子 「あとがき(『モスクワ印象記』)」
・・・と、はっきり大衆の立場から、裁判長の半畳を訂正します。もう何とも裁判長は音が立たないのです。高岡只一が凡そ四時間に亙って陳述した間、裁判長はただ数度小さい言葉尻をとらえて、それで威厳でも示そうとするようにこけ脅しめいた文句を云いましたが、誰・・・ 宮本百合子 「共産党公判を傍聴して」
・・・ 九月中には、胚胎を訂正し、次の月には、何か一つ出来たら書き、若し出来兼ねたら、鈍色の夢をも一度見なおさねばならない。 その時はかなり熱して書いたものも、今になると、あきたらぬ節が思いの外に多いのに失望する。 それは、私にとって・・・ 宮本百合子 「偶感」
・・・坪内雄蔵氏の注意で、二百何十枚かあったところを百五十枚ほどに整理し、かなづかいや字のあやまりを訂正した。題をそのとき「貧しき人々の群」とつけ直した。 今日よみかえしてみると、「貧しき人々の群」はいかにも十八歳の少女の作品らしい稚なさ、不・・・ 宮本百合子 「作者の言葉(『貧しき人々の群』)」
・・・当り前の分担事務の外に、字句の訂正を要するために、余所の局からも、木村の処へ来る書類がある。そんなのも急ぎでないのはこの中に這入っている。 書類を持ち出して置いて、椅子に掛けて、木村は例の車掌の時計を出して見た。まだ八時までに十分ある。・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・わたくしは此にこれを訂正して置きたい。 香以伝の末にわたくしは芥川龍之介さんが、香以の族人だと云うことを附記した。幸に芥川氏はわたくしに書を寄せ、またわたくしを来訪してくれた。これは本初対面の客ではない。打絶えていただけの事である。・・・ 森鴎外 「細木香以」
・・・さて今既に印刷し畢っているファウスト考には、右の第一部、第二部の正誤表を合併して、更に訂正を加えて添えてあるのである。六 正誤表に載せてある誤には、誤植もあれば、誤写もある。原稿は私の書いたのを、筆工に写させた。それが印刷所・・・ 森鴎外 「不苦心談」
・・・ファウストの場合では校正の時私と太田さんとの心附いた限の訂正をした。次に本が出来てから目を通して正誤をすることが出来る。ファウストの場合では佐佐木信綱さんが好意を以て一読して下さることになった。そこで私と佐佐木さんとの心附いた限が正誤表に上・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
・・・また自分を改良し訂正しようとしているのでもない。今の自分の能力に不満であるとともに、伸びようとしている自分の力をいかにもして生い育てようというのである。そのためには、我を破壊することが何よりもまず必要なのである。特に自分のようなものにとって・・・ 和辻哲郎 「自己の肯定と否定と」
出典:青空文庫