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・・・ 柿一本の、生れ在所や、さだ九郎。 笑われて、笑われて、つよくなる。十一日。 無才、醜貌の確然たる自覚こそ、むっと図太い男を創る。たまもの也。十二日。 試案下書。一、昭和十一年十月十三日より、ひとつき・・・
太宰治
「HUMAN LOST」
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・・・無産派の人々が当時の未熟な試案の下でこの社会と文学との上に主張した「出生」の問題――貧乏人でなければ、或は労働者でなければ新しい社会の建設やその文学に参加出来ないものであるという風な考えかたが、わたしに納得ゆかなかった。納得ゆかなくてもそれ・・・
宮本百合子
「あとがき(『宮本百合子選集』第三巻)」