・・・私が第四階級の人々に対してなんらかの暗示を与ええたと考えたら、それは私の謬見であるし、第四階級の人が私の言葉からなんらかの影響を被ったと想感したら、それは第四階級の人の誤算である。第四階級者以外の生活と思想とによって育ち上がった私たちは、要・・・ 有島武郎 「宣言一つ」
・・・だが、この椿岳の女道楽を単なる漁色とするは時代を無視した謬見である。 椿岳は物故する前二、三年、一時千束に仮寓していた。その頃女の断髪が流行したので、椿岳も妻女の頭髪を五分刈に短く刈らして、客が来ると紹介していう、これは同庵の尼でござい・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・この点に対する誤解から種々な謬見が生れる事は識者の日常目撃するところである。科学のどこを掘り返しても「不可不」は出て来ないし、その縄張りの中を隈なく捜しても「神」は居ない。そうして科学の中にこれがないという事は、それがどこにもないという証拠・・・ 寺田寅彦 「文学の中の科学的要素」
・・・元来西洋の人は我が日本の事情に暗くして、ややもすれば不都合千万なる謬見を抱く者少なからず。就中彼らは耶蘇教の人なるが故に、己れの宗旨に同じからざる者を見れば、千百の吟味詮索は差置き、一概にこれを外教人と称して、何となく嫌悪の情を含み、これが・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
出典:青空文庫