・・・その馬は脊の高い、まだ年若い赤毛の馬であります。からすはさっそく、その木のいちばん下の枝に止まりました。馬は、足もとの草を食べていました。「お馬さん、お馬さん、あなたがほんとうにかけ出したら、どんなに疾いでしょうね。私はあなたのようなり・・・ 小川未明 「馬を殺したからす」
・・・途中、おそろしく大きい赤毛の犬が、ポチに向って猛烈に吠えたてた。ポチは、れいによって上品ぶった態度を示し、何を騒いでいるのかね、とでも言いたげな蔑視をちらとその赤毛の犬にくれただけで、さっさとその面前を通過した。赤毛は、卑劣である。無法にも・・・ 太宰治 「畜犬談」
・・・おかしいとおもってみんながあたりを見ると、教室の中にあの赤毛のおかしな子がすましてしゃんとすわっているのが目につきました。みんなはしんとなってしまいました。だんだんみんな女の子たちも集って来ましたが誰も何とも云えませんでした。赤毛の子どもは・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
・・・おかしいとおもってみんながあたりを見ると、教室の中にあの赤毛のおかしな子がすまして、しゃんとすわっているのが目につきました。 みんなはしんとなってしまいました。だんだんみんな女の子たちも集まって来ましたが、だれもなんとも言えませんでした・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・ 着物が夜のようにまっ黒、縮れた赤毛が頭から肩にふさふさ垂れまっ青な眼はかがやきそれが自分だかと疑った位立派でした。 ネネムは嬉しくて口笛を吹いてただ一息に三十ノットばかり走りました。「ハンムンムンムンムン・ムムネの市まで、もう・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・私はおふろの中で赤毛碧眼の若いひとが裃をつけてどんな発音でフクワうちと叫ぶであろうか。もしかしたらフキュワーウチというであろうと可笑しく、そのラジオならきいてもよいと思いました。 二月の十三日は私の誕生日と母の命日とが重なるので何か特別・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 小さい、赤毛の百姓が、片手に斧をもって窓から小屋へ入りこもうと藻がいている。薪を手に持ったまま、平静至極にロマーシがその赤毛の百姓に訊いた。「お前何処へ行く?」「消しに行くんだよ、とっさん!」「どこも焼けてやしないよ」・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
出典:青空文庫