・・・ 演壇に吸いよせられ非常にいきいき反応しつつもう始って三時間近くなるだろう演説をきいてるのは、いわゆる自覚ある労働者、三月八日の女主人、労働婦人及赤ネクタイをつけた彼等の前衛的後継者たちばかりではない。 細い亜麻色のお下髪を小さい背中に・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・ 後継ぎになる筈の一彰さんという人は、大兵な男であったが、十六のとき、脚気を患った後の養生に祖母はその息子を一人で熱海の湯治にやった。そこでお酌なんかにとりまかれて、それがその人の一生の踏み出しを取り誤らせることになり、廃嫡となった。大・・・ 宮本百合子 「繻珍のズボン」
・・・ですから伊藤内閣の時代には所謂正義派で、その生涯では大した金も残さず、しかもその僅かの財産も、没後は後継の人の非生産的な生活や、いろいろな家族内の紛糾のために何も無くなって、母は晩年、自分の少女時代の思い出のある土地の上に、雑草の生えるのを・・・ 宮本百合子 「わが母をおもう」
・・・Hegel 派の極左党で、無政府主義を跡継ぎに持っている Max Stirner の鋭利な論法に、ハルトマンは傾倒して、結論こそ違うが、無意識哲学の迷いの三期を書いた。ニイチェの「神は死んだ」も、スチルネルの「神は幽霊だ」を顧みれば、古いと・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
・・・僕の試みは試みで終ってしまって、何等の成功をも見なかったが、後継者は段々勝手の違った物を出し出しして、芝居の面目が今ではだいぶ改まりそうになって来ている。つまり捩れた、時代を超絶したような考は持ってもいず、解せようともしなかったのが、蔀君の・・・ 森鴎外 「百物語」
出典:青空文庫