平和を目的にして、武器が製造せられ、軍備がなされるならば、其の事が既に、目的に対する矛盾であることは、華府会議の第一日にヒューズが言った通りであります。 私達は、黒人に対する米人の態度を見、また印度の殖民地に於ける英人の政策を熟視・・・ 小川未明 「芸術は革命的精神に醗酵す」
・・・ それは、維新後の当初に於ては、おくれて発達した資本主義国として、既に帝国主義的段階への過渡期に入りつゝあった世界資本主義に対抗するため軍備の力が必要だった。しかし、その軍事的性質は、国民的解放の意義が失われ過ぎ去った後までも存続し、日・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
・・・ この恐ろしい強敵に備える軍備はどれだけあるか。政府がこれに対してどれだけの予算を組んでいるかと人に聞いてみてもよくわからない。ただきわめて少数な学者たちが熱心に地震の現象とその生因ならびにこれによる災害防止の研究に従事している。そうし・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・戦時中の軍備施設を、二度とつかえないようにこわすだけに、そんな金がかかるのだろうか。ポツダム宣言を受諾して武装放棄をした日本は、どういう口実でも日本としてまた武装を行う理由はもっていないはずである。わたしたち日本の婦人の大部分は戦争を欲して・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・ 単に此の場合のみではないのでございますから――。 人間は種々な方面に此の貪慾さを持って居るのではございますまいか。 軍備の完備した国家は、自国を防禦する筈のその軍力を以て祖国を失ってしまいます。 物質の豊かな国民は、その豊・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・さもなければ一方の軍備拡張が大騒ぎで宣伝されている時に一方の国がゆうゆうと軍備縮小をするはずがありません。 ところでまず私たち自身が平和を希望していることをはっきり自覚しなければなりません。 世界に何千何万人の未亡人がいるか、孤児が・・・ 宮本百合子 「世界は平和を欲す」
・・・日本と米国そのものが人民の平和より何より先に戦略的な地点として考えられるような考えかたに麻痺させられず、世界の軍備縮少を要求しアジアにおいてそれを実現させる力となって行かなければならないと思う。 去年もおしつまった十二月四日から一週間日・・・ 宮本百合子 「世界は求めている、平和を!」
・・・ 五ヵ年計画は、体のいい軍備拡張だとブル新聞は云うが、ソヴェト同盟がホントに勤労大衆の日常の幸福のためにやっていることは、これ一事だって明らかではないか。 あがる賃銀 同じ五ヵ年計画のおかげで、ソヴェト同盟・・・ 宮本百合子 「ソヴェト労働者の解放された生活」
・・・真ギはわからないが、若し日本の社会主義者が本所深川のように、逃場もないところの細民を、あれほど多数殺し家をやき、結局、軍備の有難さを思わせるようなことをするとしたら、実に、愚の極、狂に近い。 鮮人の復讐観念が出たのなら、或程度までそれぞ・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・ソヴェトの生産拡張五ヵ年計画が、つまりは軍備拡張のコンタンだと盛に逆宣伝しているブルジョアの嘘が。 ソヴェトの五ヵ年計画は鉄、石油、石炭をこれまでの何層倍か沢山生産すると同時に、こうやって、子供の幸福をまで考え、そのために幾百万という資・・・ 宮本百合子 「楽しいソヴェトの子供」
出典:青空文庫