・・・第三期に這入って帝国主義戦争が間近かに切迫して来るに従って、ブルジョアジーは入営する兵士たちに対してばかりでなく、全国民を、青年訓練所や、国家総動員計画や、その他あらゆる手段をつくして軍国主義化しようと狂奔している。そして、それはまた、労働・・・ 黒島伝治 「入営する青年たちは何をなすべきか」
・・・彼等はその軍国主義によって、現在の搾取制度を一日でも長く、確実に維持しようとしている。そして、無産階級圧迫をどこまでもつづけようとする。それが彼等の目的である。だから軍国主義は、外国との××のためばかりでなく、国内に於ける、無産階級の××に・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・ 明治年間、殊に、日清戦争から、日露戦争前後にかけての期間は、最も軍国主義的精神が、国内に横溢した時期だった。そして、これは明治時代の作家の、そのかなり大部分のイデオロギーにも反映せずにはいなかった。殊に、明治に於ける文学運動のなかでも・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
・・・の筆者が、戦後には、まことに突如として、内村鑑三先生などという名前が飛び出し、ある雑誌のインターヴューに、自分が今日まで軍国主義にもならず、節操を保ち得たのは、ひとえに、恩師内村鑑三の教訓によるなどと言っているようで、インターヴューは、当て・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・プロイセン的な規律のもとに教育を受けなければならないのである。プロイセン軍国的訓練のために生徒たちは「特におなかのすく日曜」をこわがらなければならないのである。 こういう環境におおぜいの若い娘たちを置いたら彼女たちはいかに反応するか。そ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・現代都市の繁栄は空気の汚濁の程度で測られる。軍国の兵力の強さもある意味ではどれだけ多くの火薬やガソリンや石炭や重油の煙を作り得るかという点に関係するように思われる。大砲の煙などは煙のうちでもずいぶん高価な煙であろうと思うが、しかし国防のため・・・ 寺田寅彦 「喫煙四十年」
・・・甚だしきは独逸近代の軍国主義さへも、ニイチェの影響だと見る人がある。それによつてアメリカ人は、世界大戦の責任者をカイゼルとニイチェとの罪に帰した。 日本に於けるニイチェの影響は、しかしながら皆無と言ふ方が当つて居る。日本の詩人で、多少で・・・ 萩原朔太郎 「ニイチェに就いての雑感」
・・・が連盟して、ただ一つの「不正なる軍国主義的国家」を、やっつけている、船舶好況時代であったから、彼女は立ち上ったのだった。 彼女は、資本主義のアルコールで元気をつけて歩き出した。 こんな風だったから、瀬戸内海などを航行する時、後ろから・・・ 葉山嘉樹 「労働者の居ない船」
・・・当時のドイツは軍国主義教育でやしなわれていたから、戦争に敗けさえしなかったなら、という感情が民衆の心につよくのこっていた。そこへ巧みにつけ入って、ドイツ民族の優秀なことや、将来の世界覇権の夢想や、生産の復興を描き出したヒトラー運動は、地主や・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・日本の親のいじらしい心は、他の半面で、日本の軍国主義社会を支え維持させて行く大きな経済的社会的基盤となった。というのは「うちの息子は学問ができて人物もしっかりしているのに、金がないばかりに大学へやれない。知事や大臣にはなれなくても、せめて軍・・・ 宮本百合子 「新しいアカデミアを」
出典:青空文庫