・・・その後、大槻玄沢、宇田川槐園等継起し、降りて天保弘化の際にいたり、宇田川榛斎父子、坪井信道、箕作阮甫、杉田成卿兄弟および緒方洪庵等、接踵輩出せり。この際や読書訳文の法、ようやく開け、諸家翻訳の書、陸続、世に出ずるといえども、おおむね和蘭の医・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾の記」
・・・の末葉、戦国の世にいたるまで、文字の教育はまったく仏者の司どるところなりしが、徳川政府の初にあたりて主として林道春を採用して始めて儒を重んずるの例を示し、これより儒者の道も次第に盛にして、碩学大儒続々輩出したりといえども、全国の士人がまった・・・ 福沢諭吉 「政事と教育と分離すべし」
・・・然るに我が日本において、開闢以来稀なる不徳の教師を輩出して、稀なる不経の書を流行せしめたるは何ものなるぞや。あるいは前年、文部省より定めたる学制によりて然るものなりといわんか、然らばすなわち文部省をしてかかる学制を定めしめたるは何ものなるぞ・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
・・・十九世紀に大芸術家、科学者、政治家を輩出させた社会の創造的可能性は、その矛盾の深まるにつれてしだいに萎靡して、二十世紀前半は、ほとんどあらゆる分野においてその解説者、末流、傍系的才能しか発芽させえなかった。十九世紀は、その興隆する資本主義社・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・とともに輩出した作家たちの書くものに、無条件に満足してはいない。真にもっと新しいもの、ほんとうに自分たちの毎日の生活を再現したものを熱烈に要求している。だが、作家たちの生活は、果してその大衆的な要求を満すに適当な条件のもとに営まれているであ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 営々たる人類の進歩のための努力の結果は、将来、婦人の生活により多くの人間性と文化とを与え、子供らのための文学の創造者も輩出するであろう。一人の女として、「村の月夜」の作者が、永く困難な日本の文化の発展の消長と自身の努力とをはっきり結び・・・ 宮本百合子 「子供のために書く母たち」
・・・ 新たなリアリズムの提唱が一九三二年後半になされて以来、方向を抹殺していることから理解の混乱低下、批判なき市井風俗的文学が現実を描くものとして輩出したことは、前項でふれた。 一方プロレタリア文学の作家は、社会情勢の推移とともに、新し・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・拠は、第一次五ヵ年計画の成果によってプロレタリア文学運動の分野にあっても、他の生産部門においてと同様、多数の新しい労働者、集団農場員幹部をもつようになったこと、労農文学通信員からおびただしい新進作家が輩出して来たこと、及び、スターリンが演説・・・ 宮本百合子 「社会主義リアリズムの問題について」
・・・生活経験というものだけが、文学を創る可能性であるなら、日本に婦人作家は輩出しなければならない。どんな人でも、語るべき一つの物語はもっているのだから。 青年たちにしても、そうだと思う。今日二十代の人々の若い人生には、経験したこと、といえば・・・ 宮本百合子 「婦人の生活と文学」
出典:青空文庫