・・・ 農民は駐在所へ苦情を持ち込んだ。駐在所は会社の事務所に注意した。会社員は組員へ注意した。組員は名義人に注意した。名義人は下請に文句を言った。 下請は世話役に文句を云った。世話役が坑夫に、「もっと調子よくやれよ。八釜しくて仕様が・・・ 葉山嘉樹 「坑夫の子」
・・・ 生活は、農民の側では飢饉であった。検挙に次ぐ検挙であった。だが、赤痢ででもあるように、いくら掃除しても未だ何か気持の悪いものが後に残った。「こんな調子だと、善良な人民を監獄に入れて、罪人共を外に出さなけりゃ、取締りの法がつかない」・・・ 葉山嘉樹 「乳色の靄」
・・・三度の食事も覚束なき農民の婦女子に横文の素読を教えて何の益をなすべきや。嫁しては主夫の襤褸を補綴する貧寒女子へ英の読本を教えて後世何の益あるべきや。いたずらに虚飾の流行に誘われて世を誤るべきのみ。もとより農民の婦女子、貧家の女子中、稀に有為・・・ 福沢諭吉 「文明教育論」
時 一九二〇年代処 盛岡市郊外人物 爾薩待 正 開業したての植物医師ペンキ屋徒弟農民 一農民 二農民 三農民 四農民 五農民 六幕あく。粗末なバラ・・・ 宮沢賢治 「植物医師」
・・・ 2 狼森と笊森、盗森人と森との原始的な交渉で、自然の順違二面が農民に与えた永い間の印象です。森が子供らや農具をかくすたびに、みんなは「探しに行くぞお」と叫び、森は「来お」と答えました。 3 烏の北斗七星戦う・・・ 宮沢賢治 「『注文の多い料理店』新刊案内」
・・・ ところが秋田から山形沿線の稲田のひろがりには、見ているうちに、一種こわいような気がして来るほどに先祖代々からの農民の労力がうちこめられている。無駄な一本の畦幅さえそこには見られない、きっちりとすき間もなく一望果ない田圃になっていて、盆・・・ 宮本百合子 「青田は果なし」
・・・これは党員ではないが、ソヴェト同盟がプロレタリア・農民の国であり、社会主義の社会を建設してゆき、益々富み、階級のない社会とするためには、どういう風に働かなければならないかということを理解し、実践する婦人労働者を皆が選んで、職場でのあらゆるこ・・・ 宮本百合子 「明るい工場」
・・・今日二・二六の事件を戦争を欲しなかった青年将校の行動であるとか、農民大衆の窮乏にふるいたった青年将校たちの行動であるとかいう二・二六記録が発表されている事実と鋭くにらみ合わされる必要があります。 人民的な文化建設をいうとき、これまではい・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・『コンムーナ』という地方農民新聞を手に入れた。五日に二度発行、十頁、オムスク鉄道バラビンスキー停車場内鉄道従業員組合ウチーク・そこが編輯所である。モスクワ発行の『イズヴェスチア』『プラウダ』なんかはもうどんなにしたって二十五日以後のもの・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・露国の農民や労働者がレムブラントを虐待する。婦人運動に加わっている英国の女がレムブラントを破壊しようとする。ドイツの砲兵が美しい寺院建築を平気で目標にする。彼らの眼にはこの種の芸術は貴族や金持ちの道楽品に過ぎぬので、それを破壊するのが何ゆえ・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫