・・・廻りながら輪を巻いて、巻き巻き巻込めると見ると、たちまち凄じい渦になって、ひゅうと鳴りながら、舞上って飛んで行く。……行くと否や、続いて背後から巻いて来ます。それが次第に激しくなって、六ツ四ツ数えて七ツ八ツ、身体の前後に列を作って、巻いては・・・ 泉鏡花 「雪霊記事」
・・・店の主人は子供に物を言って聞かせるように、引金や、弾丸を込める所や、筒や、照尺を一々見せて、射撃の為方を教えた。弾丸を込める所は、一度射撃するたびに、おもちゃのように、くるりと廻るのである。それから女に拳銃を渡して、始めての射撃をさせた。・・・ 著:オイレンベルクヘルベルト 訳:森鴎外 「女の決闘」
・・・コロック抜きも螺状をなしているから能く突込めるのだよ。道路は即ち螺状を平面にしたようについているものだよ。事々物々皆螺旋サ。波線で世界を解釈しても解釈が出来るよ、螺線を見つぶしにすれば即ち波線だよ、波線螺線渦線皆曲線より成るものサ、その曲線・・・ 幸田露伴 「ねじくり博士」
・・・店の主人は子供に物を言って聞かせるように、引金や、弾丸を込める所や、筒や、照尺をいちいち見せて、射撃の為方を教えた。弾丸を込める所は、一度射撃するたびに、おもちゃのように、くるりと廻るのである。それから女に拳銃を渡して、始めての射撃をさせた・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・本当に良心をもって、情熱をぶち込める仕事は、この二つしか世の中に無いと思っている。」「知らないんだよ、君は。」少年の声も、すこし大きくなった。「知らないんだよ。村の金持の子供には、先生のほうから御機嫌をとらなくちゃいけないんだ。校長や、・・・ 太宰治 「乞食学生」
・・・たよりない幼いものに対する愛憐の情の源泉がやはり本能的なものだということが、よくのみ込めるような気がする。 こういう映画はいくらあっても決して有り過ぎる心配のないものであろう。編集の巧拙などはほとんど問題にしなくてもよいかと思われる。・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・散歩にも出かければ、好きなものを見にもゆく、はなはだ勝手気ままのやり方ではあるが、こうして好きなことをして一日遊ぶと今まで錯雑していた頭脳が新鮮になって、何を読んでもはっきりと心持ちよくのみ込める。 また、自分は読書するにしても、机の前・・・ 寺田寅彦 「わが中学時代の勉強法」
・・・素破と云えばすぐ辷り込めるよう重心を片足において目をくばって待機しているのである。 そうやって待っているのが男ばかりなのも一つの光景であると思う。屈強な男ばかりがつめかけるのである。 女はつつましくうちからもって来るお弁当を使うのだ・・・ 宮本百合子 「列のこころ」
出典:青空文庫