・・・だが、仮にモーロアの述作が真の歴史の動因をときあかしているものでないことが直感されたとして、読者はほかにどんな本を見つけることが出来るのだろう。どこにより正確な解明を見出す手がかりをさがせるというのだろう。 何か知りたくて一つの本を読む・・・ 宮本百合子 「今日の作家と読者」
・・・ 大体、文化史というものは、何となし私たちに親密に感じられてとりつきやすいと同時に、その文化についての述作の中には様々の夾雑的要素がまぎれ込んで来やすい危険がある。文化の観念は、ウエルズの所謂青春的現代の紛糾にあって必ずしもいつも明徹で・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・哲学・芸術理論から検討によってその理論における一部の誤謬が認められているのであるが、筆者は既に当時それらの成果を十分摂取して、既往の評論中に認められるプレハーノフ、デボーリンの理論的影響を自己批判し、述作の上にそれを示すことが不可能な事情に・・・ 宮本百合子 「『文芸評論』出版について」
出典:青空文庫