・・・二週日にして予は札幌を去った。札幌を去って小樽に来た。小樽に来て初めて真に新開地的な、真に植民的精神の溢るる男らしい活動を見た。男らしい活動が風を起す、その風がすなわち自由の空気である。 内地の大都会の人は、落し物でも探すように眼をキョ・・・ 石川啄木 「初めて見たる小樽」
・・・ 謙三郎もまた我国徴兵の令に因りて、予備兵の籍にありしかば、一週日以前既に一度聯隊に入営せしが、その月その日の翌日は、旅団戦地に発するとて、親戚父兄の心を察し、一日の出営を許されたるにぞ、渠は父母無き孤児の、他に繋累とてはあらざれども、・・・ 泉鏡花 「琵琶伝」
・・・ 避暑という、だれもする年中行事をかつてしたことのなかった自分には、この二週日の間に接した高原の夏の自然界は実に珍しいものばかりであった。その中でもこの地方のやや高山がかった植物界は、南国の海べに近く生い立った自分にはみんな目新しいもの・・・ 寺田寅彦 「沓掛より」
・・・もちろん他の週日に降る降らぬは全く度外視しての話である。 これもやはり、他の多くの場合と同様に自分の注目し期待する特定の場合の記憶だけが蓄積され、これにあたらない場合は全然忘れられるかあるいは採点を低くして値踏みされるためかもしれない。・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・木曜日が面会日ときまってからも、何かと理屈をつけては他の週日にもおしかけて行ってお邪魔をした。 自分の洋行の留守中に先生は修善寺であの大患にかかられ、死生の間を彷徨されたのであったが、そのときに小宮君からよこしてくれた先生の宿の絵はがき・・・ 寺田寅彦 「夏目漱石先生の追憶」
・・・どちらにしても、土曜の晩は心置きなく悠くり愉しむ時として、忙しい週日の中から取除にされています。日曜は十一時頃から教会に行き、昼餐は料理店ですませて市外の公園にゴルフをしに行ったり夫婦で夕暮まで郊外の野道を植物採集に逍遙する。 家に帰っ・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
出典:青空文庫