・・・緑雨の作の価値を秤量するにニーチェやトルストイを持出すは牛肉の香味を以て酢の物を論ずるようなものである。緑雨の通人的観察もまたしばしば人生の一角に触れているので、シミッ垂れな貧乏臭いプロの論客が鼻を衝く今日緑雨のような小唄で人生を論ずるもの・・・ 内田魯庵 「斎藤緑雨」
・・・バーテンというよりは料理場といった方が似合うところで、柳吉はなまこの酢の物など附出しの小鉢物を作り、蝶子はしきりに茶屋風の愛嬌を振りまいた。すべてこのように日本趣味で、それがかえって面白いと客種も良く、コーヒーだけの客など居辛かった。 ・・・ 織田作之助 「夫婦善哉」
・・・何に依らずわたくしは酸っぱいものを好みません、といっても、おすしとか酢の物なぞはたべますが、つまりわたくしのは、どぎつい酸っぱさを含んだものがたべられないのです。 飲料 わたくしは緑茶をずいぶん飲みます。御飯を・・・ 宮本百合子 「身辺打明けの記」
出典:青空文庫