・・・ 一つの駅で、野天プラットフォームの砂利を黒靴で弾きとばしながらどっと女学生達が乗込んで来た。いかにも学年試験で亢奮しているらしく、争って場席をとりながら甲高な大きな声で喋り、「アラア、だって岡崎先生がそう云ってたよ、金曜日だってよ・・・ 宮本百合子 「東京へ近づく一時間」
・・・然し、鳥の本性は籠の中より野天の甘美なことを熟知しているに違いない。縁側の手前よりこっちには、決して、決して来ない。チチ、チュ。……思いかえしたように、また元の菊の葉かげ、一輪咲き出した白沈丁花の枝にとまって、首を傾け、黒い瞳で青空を瞰る。・・・ 宮本百合子 「春」
・・・売笑婦、浮浪児が増大するばかりで、六・三制の予算は削られ、校舎が足りないのに、野天で勉強する子供らのよこで、ダンス・ホールと料理屋はどんどん建ってゆきます。 すべてこれらの日々の不合理をいきどおり、不満を抱き、解決の道を求めている人民の・・・ 宮本百合子 「婦人大会にお集りの皆様へ」
・・・石「ずっと野天で生えているのをさし木すれば育ちます、種生はどうも……」 やがて「奥さん、何かおこのみでこれを育てたいというような花がありましたら仰云って下さい」「どうも 私どもは素人で一向わかりませんですが、主人がいろいろそ・・・ 宮本百合子 「無題(九)」
出典:青空文庫