・・・ この時代、小熊氏の活躍は量的に旺盛であったろうけれども、おのずから自身の生活も現実への無評価ということからアナーキスティックな色調を帯びざるを得なかったと思われる。 最後に近い年に到って、小熊さんは自身の言葉の才への興じかたも落ち・・・ 宮本百合子 「旭川から」
・・・もし、文化の問題を云々する人々が、文化の水準の質的、量的な貧弱さと豊富さ、高さと低さとを歴史の光に照らして客観的に比較評価する力を失って、現象的に目前多数者の持つレベルはここであるから、と世界的低賃銀で生きていなければならない日本の民衆の、・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
・・・それだのに、バルザックは何故作品の実際では、あのように量的には未曾有の技術の鍛錬にかかわらず、終生混乱しつづけたのであったろうか。どこから、あの全作品を通じて特徴的な、リアルで精彩にとんだ描写とくどくどしく抽象的な説明との作者に自覚されてい・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・ところが、階級対立が激化し、帝国主義戦争=大衆の大量的死がブルジョアジーにとって必要となってくるにつれ、文化のいろんな部面に神秘主義が現れて来ていた。 今年になって、沢山の婦人雑誌が特別附録として、「迷信」「占ない」などの記事を盛んにも・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫