・・・そして、満洲、支那に於ける中国人労働者及び鮮人労働者たちの反抗を鎮圧するために使われているのだ。台湾に於てもそうである。台湾の蕃人に対しては、日本帝国主義のやり口は一層ひどかったのだ。強制的に蕃人の作ったものを徴発したのだ。潭水湖の電気事業・・・ 黒島伝治 「入営する青年たちは何をなすべきか」
・・・不幸にして最初の消防が失敗しすでにもう大火と名のつく程度になってしまってしかも三十メートルの風速で注水が霧吹きのように飛散して用をなさないというような場合に、いかにして火勢を、食い止めないまでも次第に鎮圧すべきかということでも、現代科学の精・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・そして、「兵は、共産主義者の反乱鎮圧のために配備されているのだと信じこんでいた」というようなことも平然と書かれ、こんにち政府が共産党鎮圧の空気を挑発しているのと、おのずからマッチするようにあらわれて来ている。 わたしたちのファシズムとの・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・しかし、社会問題そのものを解決して行こうとする社会的行動に対する鎮圧とか、抑圧とかいうものについては、やはり分裂したいままでの考え方をもって法律をお使いになるのじゃないでしょうか。 今日私どもが基本的人権についていう場合には第一、戦争の・・・ 宮本百合子 「浦和充子の事件に関して」
・・・すると、直ちにそれを共産党の蜂起とデマり、鎮圧の名目で軍隊を繰り出し、市街戦で革命的労働者、前衛を虐殺し、それをきっかけに戒厳令をも布く。そのような計画が予定のうちにあるキッカケの為に、赤松は総同盟の労働者を最も値よく売ろうとしている、と云・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・あちらも、こちらも、大ごたつきに揉めて、つづまるところは、何かと云えば、それを、きっかけとして、農村では農民の自主的な組織や活動が圧殺され、都会では市民が所謂鎮圧されてしまう。やっと全人民が一歩をふみ出した民主の試みは、二歩と歩まぬうちに、・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・だから、彼は飽くまでも経験主義者らしく、また百姓バルザの野心大なる孫息子らしい富農的現実性で、プロレタリアート鎮圧のためには、「彼等すべてに所有の感情を与えよう」とか、カソリック宗教だけが金銭に対する慾心の焔に水をかけるものであるとか、彼等・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・「鎮圧しなければならない」口実を、人民自ら呈供するほど、今日の日本の民衆は無智であるだろうか。或る種の似而非政治家は、食糧その他の人民管理委員会というものを、さも革命的なもののように誇張して、日本の民主化の今日の段階を無視した二重権力という・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・ 本多佐渡守は三河の徳川家の譜代の臣であるが、家康若年のころの野呂一揆に味方し、一揆が鎮圧したとき、徳川家を逐電して、一向一揆の本場の加賀へ行ってしまった。そうしてそこで十八年働いた後に、四十五歳の時、本能寺の変に際して家康のもとに帰参・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫