・・・ わが心霊学協会は先般自殺したる詩人トック君の旧居にして現在は××写真師のステュディオなる□□街第二百五十一号に臨時調査会を開催せり。列席せる会員は下のごとし。 我ら十七名の会員は心霊協会会長ペック氏とともに九月十七日午前十時三十分・・・ 芥川竜之介 「河童」
・・・り申候ところ、卒然としてその奥義を察知するにいたり、このよろこびをわれ一人の胸底に秘するも益なく惜しき事に御座候えば、明後日午後二時を期して老生日頃昵懇の若き朋友二、三人を招待仕り、ささやかなる茶会を開催致したく、貴殿も万障繰合せ御出席然る・・・ 太宰治 「不審庵」
・・・その会の開催前になるとやはりどうしても平生よりは仕事が忙しくなって何かとよけいに頭を使う。そうしていよいよ当日の講演会に出て講演したり討議したり、たとえ半日でもとにかく平生とは少しちがった緊張興奮の状態を持続したあとでは、全く「頭がかたくな・・・ 寺田寅彦 「映画と生理」
・・・ 話は変わるが先日銀座伊東屋の六階に開催されたソビエトロシア印刷芸術展覧会というのをのぞいて見た。かの国の有名な画廊にある名画の複製や、アラビアンナイトとデカメロンの豪華版や、愛書家の涎を流しそうな、芸術のための芸術と思われる書物が並ん・・・ 寺田寅彦 「火事教育」
・・・ 二 製陶実演 三越へ行ったら某県物産展覧会というのが開催中であって、そこでなんとか焼きの陶器を作る過程の実演を観覧に供していた。回転台の上へ一塊の陶土を載せる。そろそろ回しながらまずこの団塊の重心がちょうど回転軸の・・・ 寺田寅彦 「空想日録」
・・・を催して、その記事で全紙の大部分を埋め、そのほとんど無意味な出来事が天下の一大事であるかのごとき印象を与えると、乙社で負けてはいないで、直ちに「かばの舞踊会」を開催してこれに報ゆるといったような現象の流行した国もあったようである。 また・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・をしていないこの人から珍しい書信なので、どんな用かと思って読んでみると、 郷里の画家の藤田という人が、筆者の旧宅すなわち現在T氏の住んでいる屋敷の庭の紅葉を写生した油絵が他の一点とともに目下上野で開催中の国展に出品されているはずだから、・・・ 寺田寅彦 「庭の追憶」
・・・明治十年に至って始て内国勧業博覧会がこの公園に開催せられた。当時上野なる新公園の状況を記述するもの箕作秋坪の戯著小西湖佳話にまさるものはあるまい。 箕作秋坪は蘭学の大家である。旧幕府の時開成所の教官となり、又外国奉行の通訳官となり、両度・・・ 永井荷風 「上野」
・・・東京市中の古本屋が聯合して即売会を開催したのも、たしか、明治四十二、三年の頃からであろう。 大正三、四年の頃に至って、わたくしは『日和下駄』と題する東京散歩の記を書き終った。わたくしは日和下駄をはいて墓さがしをするようになっては、最早新・・・ 永井荷風 「正宗谷崎両氏の批評に答う」
・・・染物講習会が開催されているのであった。時節柄だなアという感想を沁々と面に浮べていろんなひとたちが見て通った。すると、その横の入口へ一台自動車がすーと止って、なかから一人のお爺さんが背中をかがめてでて来た。その自動車のフロント硝子には「自」と・・・ 宮本百合子 「新しい美をつくる心」
出典:青空文庫