・・・しかもこの発見はデンマーク国の開発にとりては実に絶大なる発見でありました、これによってユトランドの荒地挽回の難問題は解釈されたのであります。これよりして各地に鬱蒼たる樅の林を見るにいたりました。一八六〇年においてはユトランドの山林はわずかに・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・今の教育は多くの生徒を一教場の内に集めて、与えられたる教科を教うるようであるが、それでは各個人に就て深い注意を与えて各の個性の開発伸長を計ることは誠に困難な事だ。 然しそれも教師の心得次第では全く出来ぬ事ではない。ここにして思えば昔の漢・・・ 小川未明 「人間性の深奥に立って」
・・・女性の造化から与えられているさまざまの霊能が恋愛の本能の開発する時期に同時に目をさまし、生き生きとあらわれてくる。美と力とそしてことに霊の憧憬が恋愛の感情とともにあらわれるということは、面白いまたありがたい事実といわねばならぬ。徳、善、道と・・・ 倉田百三 「女性の諸問題」
・・・今日の婦人の職業的進出は一面たしかに婦人の生活欲望の開発と拡充との線にそえるものではあるが、他面においては生活のための余儀なき催促によるものである。男子が独力で妻子を養うことができないための共稼ぎの必要によるものである。適当の収入さえあれば・・・ 倉田百三 「婦人と職業」
・・・殊に我輩が日本女子に限りて是非とも其智識を開発せんと欲する所は、社会上の経済思想と法律思想と此二者に在り。女子に経済法律とは甚だ異なるが如くなれども、其思想の皆無なるこそ女子社会の無力なる原因中の一大原因なれば、何は扨置き普通の学識を得たる・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・それは、たしかに幕府政治の無力を知り、封建制におしひしがれている社会生活について沈黙しているにたえなくなった「人智の開発」であり、明治に向う知識慾であったにはちがいない。しかし、これらの藩学校は、藩という制度の枠にはまっていた本質上、当時の・・・ 宮本百合子 「新しいアカデミアを」
・・・ 沙漠という自然の事情と、それを生産的に開発しようとする人間の意志、土地の相貌が新しくなるにつれその労作の過程を通って人間が生活感情、世界観を新にして行く現実の例はソヴェト映画の「トルキシブ」ではっきり語られている。「トルキシブ」ほど有・・・ 宮本百合子 「イタリー芸術に在る一つの問題」
・・・私はだんだん読んで行くうちに、非常に感興を覚え、この種の科学的研究は、新しく、そして科学的な社会観の上に立って芸術を創造し、そういう創造力を開発してゆくために、もっともっと多方面にわたって活溌になされてゆかなければならないと信じるようになっ・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・ 現在の世界の文明が到達している技術と資源開発の程度でさえも、地球は今日の全人口の四倍を、それも良好な生活水準で維持することが出来ると、学者は云っているそうだ。それだのに、今日世界の大部分がひどい食料制限をして、私たちはさつまいもを買う・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・幾何の大学が在り、幾種の専門学校があったとしても、若し其に依って開発されて行くべき女性が、彼女等の価値を認められて居なかったら如何うでございましょう。男性と同等の教育をうくべきものであると云う公衆の理解がなければ如何うでございましょう。・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
出典:青空文庫