・・・を漱石が独歩君に敬服すると云う意味に解釈するものはないからこの点は安心である。 愚見によると、独歩君の作物は「巡査」を除くのほかことごとく拵えものである。ただしズーデルマンのカッツェンステッヒより下手な拵えものである。花袋君の「蒲団」も・・・ 夏目漱石 「田山花袋君に答う」
・・・故に我輩は単に彼等の迷信を咎めずして、其由て来る所の原因を除く為めに、文明の教育を勧むるものなり。一 人の妻と成ては其家を能く保べし。妻の行ひ悪敷放埒なれば家を破る。万事倹にして費を作べからず。衣服飲食抔も身の分限に随ひ用ひて奢・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・我が輩かつていえることあり、方今政談の喋々をただちに制止せんとするは、些少の水をもって火に灌ぐが如し、大火消防の法は、水を灌ぐよりも、その燃焼の材料を除くに若かずと。けだし学者のために安身の地をつくりてその政談に走るをとどむるは、また燃料を・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・この弊を除くの一事は、議論上には容易なれども、事実に行われざるものなり。その失、三なり。一、官の学校にある者は、みずからその学識を測量せずして、にわかに仕官に志すの弊あり。けだしその達路近ければなり。その失、四なり。一、官の学校は、・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・故に余輩の注意するところは、未だ積極に及ばずして先ずその消極の憂を除くの路に進まんと欲するなり。すなわちその路とは他なし、今の学校を次第に盛にすることと、上下士族相互に婚姻するの風を勧ることと、この二箇条のみ。 そもそも海を観る者は河を・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・これらの教育には、父母を除くほかに更に良き教師を求めんとするも容易に得難きものにして、殊に子供の教育においては、十中の七、八に居るべき大切なる箇条なり。然るに今ただ文字を知らざるの一箇条を以て、他の大切なる箇条をも挙げてこれを他人に託すると・・・ 福沢諭吉 「教育の事」
・・・たとえば政府の議定をもって、一時租税を苛重にして国民の苦しむあるも、その法を除くときはたちまち跡を見ず。今日は鼓腹撃壌とて安堵するも、たちまち国難に逢うて財政に窘めらるるときは、またたちまち艱難の民たるべし。いわんや、かの戦争の如き、その最・・・ 福沢諭吉 「政事と教育と分離すべし」
・・・をやめて代りに「火桶」の形容詞など置くべく、結句は「火桶すわりをる」のごとき句法を用うるか、または「○○すわりをる」「すわり○○をる」のごとく結びて「哉」を除くべし。かつふれて巌の角に怒りたるおとなひすごき山の滝つせ この歌・・・ 正岡子規 「曙覧の歌」
・・・ 従来の誤った結婚観念、習慣、制度を改正し、簇出しつつある多くの不正、不幸を取除くために正当な離婚法が制定されることは急務です。然し、究極に於て各人の叡智と愛との根源に還る問題ではありますまいか。 人類の最も本質的な、最も純粋である・・・ 宮本百合子 「心ひとつ」
・・・会議はパリで開かれ、参集国は日本を除く二十八ヵ国、代表者は二百三十名。まことに興味ある次の如き議題で世界的に討論された。一。文化遺産二。ヒューマニズム三。民族と文化四。個人五。思想の尊厳六。社会に於る作家の役割七・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
出典:青空文庫