・・・ それは暫く措き、都会がいたずらに発達するということも、中央集権的であるということも、従って都会人は、ようやく此生活から離れて行くがために、いよ/\変則的な生活を営むということも、また中央集権的なるが故に、文化がこゝのみに発達して、都会・・・ 小川未明 「街を行くまゝに感ず」
・・・信長に至っては自家集権を欲するに際して、納屋衆の崛強を悪み、之を殺して梟首し、以て人民を恐怖せしめざるを得無かったほどであった。いや、其様な後の事を説いて納屋衆の堺に於て如何様の者であったかを云うまでも無く、此物語の時の一昨年延徳三年の事で・・・ 幸田露伴 「雪たたき」
・・・「ホホン、そりゃええ、“中央集権”で、労働者をしめあげて――」 ある晩、町のカフェーで、学生たちと論争したとき、そのときは酔ってもいたが、小野はあいてのあごの下に顔をつきだしながらいった。「――それで、諸君が、レーニンさんになん・・・ 徳永直 「白い道」
・・・ 乏しい故の中央集権が、日本各地方の文化にそれぞれ独特な、ゆたかな展開を可能としなかった上に、一層わるいことは、その状態のまま文化面でも出版業のような利潤追求の企業はどんどん成長して行ったことである。 どんな国でも、都会人口よりは、・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・中村氏によって文学中央集権の崩壊と云われている現象は、文学のこととして云えばつまりは一貫した影響をもつ文芸思潮の崩壊を意味するであろう。そして今日では、都会での米、味噌、水にかかわることとして見られる部分があると云っても、あながち文学と全く・・・ 宮本百合子 「文学と地方性」
出典:青空文庫