・・・若くして死んだ、詩人や、革命家は、その年としては、不足のないまで、何等か人生のために足跡を残していました。 人は、年齢により、また、その時代により、生活の意識も、理想も異なるものです。この世の中が、一人の英雄によって左右されると考えられ・・・ 小川未明 「机前に空しく過ぐ」
・・・ 生活の革命だと信じて思い昂っている耕吉には、細君の愚痴話には、心から同情することができなかったのだ。 惣治は時々別荘へでも来る気で、子供好きなところから種々な土産物など提げては、泊りがけでG村を訪ねた。「閑静でいいなあ、別・・・ 葛西善蔵 「贋物」
・・・ 丘のそこかしこ、それから、丘のふもとの草原が延びて行こうとしているあたり、そこらへんに、露西亜人の家が点々として散在していた。革命を恐れて、本国から逃げて来た者もあった。前々から、西伯利亜に土着している者もあった。 彼等はいずれも・・・ 黒島伝治 「渦巻ける烏の群」
・・・しかし、革命的プロレタリアートに対しては、徹底的に弾圧の手をゆるめやしないのだ。 なお、そればかりではない。第三期に這入って帝国主義戦争が間近かに切迫して来るに従って、ブルジョアジーは入営する兵士たちに対してばかりでなく、全国民を、青年・・・ 黒島伝治 「入営する青年たちは何をなすべきか」
・・・文学・芸術などにいたっても、不朽の傑作といわれるものは、その作家が老熟ののちよりも、かえってまだ大いに名をなしていない時代に多いのである。革命運動などのような、もっとも熱烈な信念と意気と大胆と精力とを要するの事業は、ことに少壮の士に待たねば・・・ 幸徳秋水 「死刑の前」
・・・「ロシア革命万歳」「日本共産党バンザアーイ」 ワァーッ! という声が何処かの――確かに向う側の監房の開いた窓から、あがった。向うでも何かを云っている。俺の胸は早鐘を打った。 飯の車が俺の監房に廻わってきたとき、今度は向うの一・・・ 小林多喜二 「独房」
・・・それから、君、電車が出来て交通は激しくなる――市区改正の為にどしどし町は変る――東京は今、革命の最中だ」「海老茶も勢力に成ったね」と原は思出したように。「うん海老茶か」と相川は考深い眼付をして言った。「女も変った」と原は力を入れ・・・ 島崎藤村 「並木」
・・・ 排除のかわりに親和が、反省のかわりに、自己肯定が、絶望のかわりに、革命が。すべてがぐるりと急転廻した。私は、単純な男である。 浪曼的完成もしくは、浪曼的秩序という概念は、私たちを救う。いやなもの、きらいなものを、たんねんに整理して・・・ 太宰治 「一日の労苦」
・・・ なるほど二人ともに革命家である。ただレニンの仕事はどこまでが成効であるか失敗であるか、おそらくはこれは誰にもよく分らないだろうが、アインシュタインの仕事は少なくも大部分たしかに成効である。これについては世界中の信用のある学者の最大多数・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・幸に世界を流るる一の大潮流は、暫く鎖した日本の水門を乗り越え潜り脱けて滔々と我日本に流れ入って、維新の革命は一挙に六十藩を掃蕩し日本を挙げて統一国家とした。その時の快豁な気もちは、何ものを以てするも比すべきものがなかった。諸君、解脱は苦痛で・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
出典:青空文庫