・・・部落は自作農ばかりだから、闘争組織は農民委員会であると規定し、「僕はいよいよ実行運動に入ろう」「時はあたかもウンカ問題で村会とこじれている」「やさしくなくとも僕はやる。我々の故郷に革命の詩をもたらすための開墾を」と、プロレタリア作家の農村に・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・鹿野医院へ行ったが日曜で留守。もう一軒、あっちの桜並木通りの医者へ行った。やや暫くして、骨はとれずぷりぷりして帰って来た。洋館まがいの部屋などあるが、よぼよぼのまやかし医者で、道具も何もなく、舌を押えて覗いては考え、ピンセットを出しては思案・・・ 宮本百合子 「金色の秋の暮」
・・・労働調査のために医員が出張して、一つのキャンプを試験管や血圧検査機で一杯にしている。「ギガント」事務所のわきにフォードの幌形自動車がとまって、踏段に片足かけ、パイプをほじっているのは、縞シャツのアメリカ技師だ。洒落た鎌と槌との飾りをつけ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・一定量だけ各医院に配給されるのだそうです。 今読んでいるカロッサの小説は本物で、なかなか面白く、一日置きに読んでもらうのが待遠しゅうございます。カロッサが大戦後のドイツの生活のなかから希望と精神の確乎とした人間成長の可能を見出だそうとし・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・一〇七 二一七 一〇二・二パーセント 子供の遊場 二〇三 五〇六 一四九・三パーセント 固定託児所 一〇〇八 一五九七 五八・〇パーセント 児童健康保護医員 ・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・弟が、ひどく心臓をわるくし、本所の奉公先から、浅草猿若町の医院に入院して居た。それを赤羽まで書生が背負って行ってくれ、あと兄が福島から来、三日、のまず、食わずでたずねた揚句、やっと見つけて、北千住につれて行った。よく助ったものなり。さい、十・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・この小説で作者の語ろうとするテーマは、朝田医院主及びそれをとりまく一群の現代的腐敗、堕落を逆流として身にうける志摩の技術的知識人の人間的良心、能動性の発展の過程に在ることは明らかである。単なる事件、人事関係、デカダンスの錯綜追跡の探偵もの風・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ 幸雄が藻掻けば藻掻くほど、腕を捉えている手に力が入ると見え、彼は顔を顰め全身の力で振りもぎろうとしつつ手塚と医員とを蹴り始めた。朝日を捨てて、詰襟の男が近よった。「おい、若いの、頼む、押えつけてくんな」 そのときは桁の上に登っ・・・ 宮本百合子 「牡丹」
・・・「院長は今日保健省へ行きましたが、当直医員の案内でもいいですか?」 自分は、体を見て貰うのじゃない。ソヴェト同盟では、あらゆる勤労婦人に出産前後三ヵ月から四ヵ月の有給休暇を与える。出産支度料を月給の半額まで支給する。九ヵ月間牛乳代を・・・ 宮本百合子 「モスクワ日記から」
私が訳したファウストについては、私はあの訳本をして自ら語らしめる積でいる。それで現にあの印行本にも余計な事は一切書き添えなかった。開巻第一の所謂扉一枚の次に文芸委員会の文句が挿んであるが、あれも委員会からの注意を受けて、ようよう入れた・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
出典:青空文庫