・・・ 二かたまり、流れる白雲と青空とを背にして、雀は、嘗て見たどの雀よりも、簡潔に、強く、心を動かした。 宮本百合子 「傾く日」
・・・評伝は十二月初旬小説が終ってから再びつづけて、前半のように緻密にして生活的であり、生活と芸術とその歴史性の掘下げでユニークなものを完結します。小説もそのように生活のディテールと活力の横溢したものにしたいと思います。「乳房」を書いているから、・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・の選定が完結し、既に第一巻は出版されていることに一言ふれたい。「新万葉集」の選定されるに到った動機には、同質ならざる二様の意図が作用していたと思われる。一つは、明治・大正・昭和に亙る聖代に日本古来の文学的様式である和歌の歩んで来た成果を収め・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
『中央公論』の新年号に、アンドレ・ジイドのソヴェト旅行記がのっている。未完結のものであるが、あの一文に注目をひかれ、読後、様々の感想を覚えた読者は恐らく私一人にとどまらなかったであろうと思う。 間もなく、去る一月六日から・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・はこれから二年ぐらいの間に完結したいと思っている長篇小説の発端で、彫刻で云えば、まだやっと頭の、しかもその一部分しか現れて来ていないものであるが、これはこれとして一篇をなしていると思う。 私たち一部の作家が、この数年間に経験して来た生活・・・ 宮本百合子 「序(『乳房』)」
・・・しかし、一つの声なり行動なりがそれ自身完結完成しているということはあり得無いのだから、今日から明日へつづく現代の歴史的な推移の間で、私たちは自分たちとしての生のモラルを掴まなければならず、現代に生れあわせた最高の可能を知らなければならないの・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・を前年度において示しています。 たとえば野間宏氏は「暗い絵」を完結して「肉体は濡れて」「顔の中の赤い月」「華やかな彩り」とうつってきましたが主題の小ささにくらべて長い小説にまとめてゆく文学上の危険な現象を、本年はどのように緊密な方向へ発・・・ 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
・・・を待っているという人も居なかったし、不馴れな多人数での外国旅行で、さすがの父にも、この「西欧行脚」を完結することは不可能であった有様がうかがわれます。 以下に、折々の通信のほんの一部分を抄出し、これらの通信の書かれた当時の雰囲気紹介のた・・・ 宮本百合子 「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」
・・・何と簡潔な、何と真実な声であろう。今日の私たちはこう云うことが出来る。「別人にならずして、この戦争を経験したものはありません」と。〔一九四六年二月〕 宮本百合子 「「どう考えるか」に就て」
・・・一九二六年「伸子」完結。「一太と母」「未開な風景」等。一九二七年「伸子」を単行本にする為に手入れをしながら「高台寺」「帆」「白い蚊帳」「街」「一本の花」等を書く。十二月初旬、湯浅芳子と共にソヴェト・・・ 宮本百合子 「年譜」
出典:青空文庫