・・・ 婦人に参政権が与えられ、民主日本の成長のために、と、表面にぎやかに啓蒙がされているけれども、婦人の二千九十一万余票を加えて代議士を選出し、成立した議会を、天皇という身分の人が、その意志で解散させることが出来るのだとしたら、何と選挙その・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
・・・こういう現実に即してみたとき、もし産制の運動者が今日のアメリカにおける変化をただ自分たちに自覚されている善意と努力の側からだけで評価して雀躍するなら、計らずも彼らのよろこびの声は本質的にまことに非人間的な声への合唱となるのである。私たちに生・・・ 宮本百合子 「夜叉のなげき」
・・・これらの事情が、荷風の現実としては「婦人参政権の問題なぞもむしろ当然のこととしているくらいである」が、「然し人間は総じて男女の別なく、いかほど正しい当然な事でも、それをば正当なりと自分からは主張せず出しゃばらずに、どこまでも遠慮深くおとなし・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
・・・ぜ有名なエレン・ケイ女史などが、二十世紀の初頭に恋愛と結婚を中心に婦人の問題をロマンティックではあるが、女の立場としてとりあげるようになり、イギリスの、パンクハースト夫人がほとんど狂熱的な行動で婦人の参政権を要求しなければいられない気になっ・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
・・・試験管を挾んで火にあたためて、薬の一二滴を落してふって色の変ったところを眺めたり、アルカリ反応、酸性反応と細く小さい試験紙をいじったこと、それらが淡い光景となって想い出される。今は女学校の化学もきっと大変ちがった教えかたをされているだろうと・・・ 宮本百合子 「私の科学知識」
出典:青空文庫