・・・方はそういう工合で駄目だし、ロンドンにいた父が留守中に妻が洋画の稽古をはじめることを賛成しないのは、母が若いのに、教師が男だからというのが真実の理由だと理解していた母は、女に対しては、そんな片手おちを強いるものの考えかたに対して、一種の憤懣・・・ 宮本百合子 「母」
・・・旧い親子の義理がH家の人々と後ぞいの老婦人との間にないとして、嫁であるA子さんにだけその義理を強いるのは間違いです。 待たずに結婚するように打開されるべきです。 二 あなたが、お兄さんからすすめられた方・・・ 宮本百合子 「三つのばあい・未亡人はどう生きたらいいか」
・・・離婚するなら子供はすてて出ろ、ということは、無慚な姑や夫が嫁に隠忍を強いるからめてからのおどかしとして云ったことである。自由になった離婚法で、不幸な妻は自分から離婚してよいことになり、その上母と暮したいと主張する三人の子をひきとって、一緒に・・・ 宮本百合子 「離婚について」
・・・何ぜなら、もしも然るがように新時代の意義が生活の感覚化にありとするならば、いかなるものと雖もそれらの人々のより高きを望む悟性に信頼し、より高遠な、より健康な生活への批判と創造とをそれらの人々に強いるべきが、新しき生活の創造へわれわれを展開さ・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・三 現代の因襲的道徳と機械的教育は吾人の人格に型を強いるものである。「人」として何らの霊的自覚なく、命ぜらるるがままに右に向かい左に動く。かくて忠も孝も無意味なる身体の活動となる。徳の根底に横たわるべき源泉なくして善といい悪・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫