・・・一五六〇年頃p.72 新教と「家庭」。市民生活の単位として。勝手にされぬ砦として。 これは極めて大きいテーマである。イギリスにおいて、ミルトンの一夫一婦 純潔な家庭を称揚したパラダイス ロストフランスの人々も家庭というも・・・ 宮本百合子 「バルザック」
・・・第一に心づくことは、ドイツもフランスも、ロシアも、新教と旧教、ギリシャ正教などのちがいこそあれ、いずれも一般の常識は深い宗教的影響をうけていて、教育そのものが、宗教的教義の重石に窒息されている国柄であったということである。そういう宗教の独断・・・ 宮本百合子 「若き精神の成長を描く文学」
・・・世界の青年に告げて、未来の輝やかしい道から大量殺人を一掃するために、政治的意見、信教に関係なく団結せしめよ。世界平和大会はここに、平和の擁護こそあらゆる民族の義務であることを宣言する」と。そして、ポツダム宣言をはじめ世界平和のために役立つ協・・・ 宮本百合子 「わたしたちには選ぶ権利がある」
・・・し、学者が献身的態度を以て学術界に貢献しながら、同時に君国の用をなすと云う方面から見ると、模範的だと云って、ハルナックが事業の根柢をはっきりさせる為めに、とうとう父テオドジウスの事にまで溯って、精しく新教神学発展の跡を辿って述べていた。自分・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・『カトリック』教の国には尼になる人ありといえど、ここ新教のザックセンにてはそれもえならず。そよや、かのロオマ教の寺にひとしく、礼知りてなさけ知らぬ宮のうちこそわが冢穴なれ。」「わが家もこの国にて聞ゆる族なるに、いま勢いある国務大臣ファブ・・・ 森鴎外 「文づかい」
・・・それは彼が常にその完全な生活の感覚化から、他の何者よりもより高き生活を憧憬してやまなかった心境から現れたものに他ならない。感覚触発の対象 未来派、立体派、表現派、ダダイズム、象徴派、構成派、如実派のある一部、これらは総て自分・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・ 彼は、妻の、その天晴れ美事な心境に、呆然としてしまった。彼はもう涙が出なかった。「さようなら。」と暫くして妻はいった。「うむ、さようなら。」と彼は答えた。「キーボ、キーボ。」と母は呼んだ。 しかし、彼女はもう答えなかっ・・・ 横光利一 「花園の思想」
・・・ 特に私は今、千数百年以前の我々の祖先の心境を心中に描きつつ、この問題を考察するのである。 まず私は、人間の心のあらゆる領域、すなわち科学、芸術、宗教、道徳その他医療や生活方法の便宜などへの関心等によって代表せられる人間の生のあ・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
・・・彼らは多くの心境を理解し得ないがゆえに、排斥する。しかし理解すればとても頭があがらなくなるようなものを、不理解のゆえに排斥するのは、彼ら自身にとってもむしろ悲惨ではないか。私は思いついたままにドストイェフスキイの例を引こう。この作家が人間の・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
・・・これは著者の人格的生活における近来の進境を物語るものにほかならぬ。そうしてそのことを我々はこの書の内容において具体的に見いだすことができるのである。 著者はこの書の序文において、「悠々たる観の世界」を持つことの喜びを語っている。この書は・・・ 和辻哲郎 「『青丘雑記』を読む」
出典:青空文庫