・・・ここまで、日本の労働運動の実状について極東委員会の注意を喚起し、基本的人権を現実のものとするようにと日本的限界を拡げていったのは、どういう日本の官僚たちの仕事だったろう。これこそまったく、勤労大衆の実行力と組合の献身とその前衛である党とが、・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・民主主義の根本的な人権の確立はこのことにかかっている。同時に私達は自分の人民としての権利――人権の必然に立って、自分達の生活をよりよくして行く努力、社会をより合理的にこしらえ直して行く権利というものを持っている。外部の力から無理強いされた生・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・ 戦争中という言葉が、今日いわれる場合、私たちは一言の説明を加えないでも、それが苦しかった時代、無茶な抑圧のあった時代、人権がふみにじられていた時期として、心が通じ合う。一冊の雑誌、一冊の本、風呂屋、理髪店での世間話さえ、それが戦争につ・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・という小説は同志小林が初めてボルシェヴィク作家らしい著実さ、人絹的艷のぬけた真の気宇の堂々さで主題の中に腰を据え書きはじめたことを印象させ、その点で感動を与える作品であった。同志小林が作家としても一段深い発展に立っていることを感じさせた。ブ・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価によせて」
・・・ 重吉が網走からもってかえって来た人絹の古い風呂敷包みの中には、日の丸のついた石鹸バコ、ライオンはみがきの紙袋、よれよれになった鉄道地図、そして、一まとめに大事にくくった書類が入っていた。その束の中に、一通の電報があった。デタラスグカエ・・・ 宮本百合子 「風知草」
出典:青空文庫