・・・ 昭和四年には、政友民政ともに婦人公民権承認に立ち、この年の一月には婦選デーが催された。しかし、市町村制改正の政府案から婦人公民権は削除され、当時、公民権賛成議員が多くて政府はその対策に腐心したと記録されている。政友民政両党から出された・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・中途半端な人道主義はイザと云う時、役に立たないと云うことを知ったところは犬養健の部分的な賢さだが、人道主義を清算して親父の秘書となって政友会に納まった所に、彼の決定的な階級性の暴露と見透しのきかないブルジョア・イデオロギーの具体化とがある。・・・ 宮本百合子 「ブルジョア作家のファッショ化に就て」
・・・ 松林をぬけて、彼等は清遊館の方へ歩き出した。 宮本百合子 「帆」
・・・傍聴席の右側下政友会中島派というあたりが発源地らしい見当である。黙ってろ! いわせろ! そういう罵声も交々であった。 米内首相の答弁ぶりは、一つも気の利いたところのないものであるが、答弁の精神的態度とでもいうべきものは、正面に自分の体の・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・「支那街の記」「西遊日誌抄」などをみると、荷風はしきりにボードレェルなどをひいて自傷の状をかなでているのであるが、荷風の本質は決して徹底したデカダンでないし、きっすいの意味でのロマンティストでもないことが感じられる。荷風の本質は多分にお屋敷・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
・・・一歩を進めて言えば、古風な人には、西遊記の怪物の住みそうな家とも見え、現代的な人には、マアテルリンクの戯曲にありそうな家とも思われるだろう。 二月十七日の晩であった。奥の八畳の座敷に、二人の客があって、酒酣になっている。座敷は極めて殺風・・・ 森鴎外 「鼠坂」
出典:青空文庫