・・・もちろん人々の才・不才もあれども、おおよそこれまで中等の人物を経験したるところを記せしものなり。独見もでき、翻訳もでき、教授もでき、次第に学問の上達するにしたがい、次第に学問は六ッかしくなるものにて、真に成学したる者とては、慶応義塾中一人も・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾新議」
・・・を固くせんとするには私徳を脩めざるべからざるの道理も、既に明白なりとして、さて今日の実際において、我が日本国の政治家はいかなる種族の人にして、その私徳の位は如何と尋ぬるに、外面より見て人品はいずれも皆中等以上の種族なれども、特別に有徳の君子・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・それからマリヤの夜の時間は家計簿の記入と中等教員選抜試験準備のためにつかわれて、朝の二時三時まで二つしか椅子のないキュリー夫婦の書斎での活動はつづきます。 一八九七年、マリヤは長女のイレーヌを生み、彼女の家庭生活と科学者としての生活は一・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人の命の焔」
・・・国民学校や中等学校は教科書が絶対に足らない。それは、そうなる。一冊三千五百円の教科書はないから。よしんば、親はその句集を買っても、子供の教科書は、人間の成長に入用な教科書だから、儲けがきまっているから、ない。文学の生活とその本の出版というこ・・・ 宮本百合子 「豪華版」
・・・ 今から十七年前、帝政ロシアの資本家・地主と僧侶の支配下のロシアで、勤労大衆のために中等教育施設がどんなものだったかは次の表を見ても明かだ。一九一四年度ロシアの中学校、実務学校、予備学校における学生の出身階級の分布 世襲貴族・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・来年中等学校へ入る子供たちはどんな試験をうけることになるのだろうかと思っている昨今の皆の感情も、予測のつかなさと不安定の感とその現象に対する一市民としての無力感とに於て、明らかな時代の感情の色調を帯びている。 あらゆるものが強い旋回の裡・・・ 宮本百合子 「今日の読者の性格」
・・・ 近頃小学校は共学が多くなったけれども、中等学校で共学なのは文化学院ぐらいなものではなかろうか。映画は若い男と女との奔放な交渉を映し出して女学生時代の娘の感受性ばかり鋭い情感を刺戟する。学校は、今の社会の風潮が浮薄であるということだけを・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・ 私は奮起して字引と首引き、帳面に自分でわかったと思う翻訳をしてゆくのですが、女学校ではピータア大帝が船大工の習業をしたというような話をよんでいるのですから、どうもデルフィの神殿だとか、破風だとか、柱頭、フィディアス等々を克服するのは容易・・・ 宮本百合子 「写真に添えて」
・・・敵性の言葉という理由で中等学校の正課から、英語がとりのぞかれ、レコードは音盤とよばれ、イギリスやアメリカの音楽はレコードできいてもいけなかった。世界の声のきける短波のラジオは使用禁止され、ラジオは軍部、情報局のさしずどおり、一九四五年八月の・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・これまでは、日本の女子中等教育は、よい妻よい母をつくることを目的として行われて来た。明治三十二年に女学校令というものがきめられて以来、女学校と中学校とは同い年で小学校を終った男の子と女の子のための学校でありながら、五年を終業したときの程度は・・・ 宮本百合子 「働く婦人の新しい年」
出典:青空文庫