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・・・ 女の子は、一本三四銭位の花かんざしをさして、やっぱり頸巻をまきつけて、菓子屋の店先だの家の角などに三人四人とかたまって、何か話したり、砂利を入れた木綿の「石なご」をしたり、石のおはじきをしたりして居る。木綿の着物にメリンスのお立てなん・・・
宮本百合子
「農村」
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・・・比那古のもので、春というのだそうだ。男のような肥後詞を遣って、動作も活溌である。肌に琥珀色の沢があって、筋肉が締まっている。石田は精悍な奴だと思った。 しかし困る事には、いつも茶の竪縞の単物を着ているが、膝の処には二所ばかりつぎが当って・・・
森鴎外
「鶏」