・・・このことを思えば勤労所得税の廃止は、当然すぎる。まして、きょうの新聞によると、日本には西ドイツと同じように、経済集中排除法を緩和して資本家の復活を可能にしようという案が示されている。「極東委員会の、ソヴィエト、中国、フィリッピン等の各国・・・ 宮本百合子 「正義の花の環」
・・・日本の治安維持法が昭和三年に制定されて、昨二十年の秋廃止されるまでの十七年間に、ものを考え、日本の未来について憂慮する人々を約十万人も投獄した。幾人もの人が獄中、獄外で殺された。治安維持法が廃止された去年の秋、その法律の犠牲になった人々は、・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・ 新しく採択された中華人民共和国の大憲章が、その第一章第六条、第五章第四十八条に「婦人を束縛する封建制度を廃止」し、母性福祉を約束していることは当然といいながら、その現実的な価値ははかりしれません。なぜなら、新しい中国の人民社会において・・・ 宮本百合子 「宋慶齢への手紙」
・・・彼は、サン・シモンの今日から見れば空想的な社会主義を勉強した急進的学生として、特にロシア民族の発達のために農奴制廃止を熱心に主張した一人であった。 一八四二年にゴーゴリが死んだ。その時、ツルゲーネフは極めて自然の感情の発露によってゴーゴ・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・そして、支配階級の立場の弱さをかくす為にされようとする統一審理廃止に対しては、どこ迄も統一審理を継続させるよう闘わなければなりません。〔一九三二年九・十月〕 宮本百合子 「同志たちは無罪なのです」
・・・八〇年代の農奴制度の偽瞞的な廃止やその後に引きつづいて起った動揺に対して行われた弾圧のために消極的になった急進的な若い分子は、この饑饉の惨状の現実をモメントとして民衆悲惨の問題を再びとりあげて立った。ゴーリキイがまだ二十一歳ぐらいでニージュ・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・徳川氏の権力維持の努力とそれを繞る野心ある諸家の闘いは、やはり女性をさまざまの形でその仲介物とした。稗史の中でも徳川の大奥というものは伏魔殿とされた。沢山の隠れた罪悪と御殿女中の不自然な生活から来る破廉恥な行為とは、画家英一蝶に一枚の諷刺画・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫