一九四九年の春ごろから、ジャーナリズムの上に秘史、実録、実記と銘をうたれた記録ものが登場しはじめた。 氾濫した猥雑な雑誌とその内容はあきられて記録文学、ルポルタージュの特集が新しい流行となった。 記録文学、ノン・フ・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・そして当時の既成作家の大部分が、円本の氾濫によって所謂金もちになり、多少の資産をもつようになり、溌剌たる創作力を次第に生暖い日本生活の懐の中で鈍らせ始めた。折から、好況後の経済恐慌によって世間は鋭く現実に目を醒されたと同時に、文学の領域に力・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・七月にはスペインにフランコ将軍の叛乱が起り、アンドレ・マルロオは政府軍の義勇軍に投じた。第十四回国際ペンクラブの大会は、会合地の関係もあって、英米ともに文学の現役を送らず、文学的には貧弱であったが、それにしても猶、日本から遙々出席した「夜明・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 成程最近の種々な文学賞の氾濫は、一層文学を愛好する青年を見えざる文壇というものの周囲につめかけさせ、そのことは現実に或る種の作家が、人間的にも文学的にも薄弱な少なからぬ若者に囲繞せられる結果をひき起している。それぞれの賞に関係する選者・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 臍の緒なしにつくられる「手芸的作品」氾濫の問題は、案外に大きく、真実の意味での創作の方法を見失った作家が、モチーフをさえその心胸から消して、敢て苦しまないという不幸から生じているのである。 作家がモチーフをつよく自身の芸術的魂のう・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・や「叛乱」の政治的・文学的意味を自覚して創作したであろうし、ファデーエフの「壊滅」は偶然の作品ではなかった。単にゲリラに参加した若者の手記ではなかった。けれども、同時代の作家でたとえばピリニャークが、馬鈴薯の袋をかついで、鉄道の沿線を、あっ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・イギリス 金を出して叛乱を起させた。アマヌラ今年に入ってカブールから逃げ出した。逃げるときはイギリスの飛行機で逃げた。又暫くして帰る。 カブールにはバチェ・サカオ Баче-Сакао が居たが、一月三十一日には逃げ出したがって居る。多・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・日本の近代文学におけるデカダンスやエロティシズムは、封建的な形式的道義・習俗にたいする人間性の叛乱としてあらわれたものでした。古い例でいえば、徳川末期の武家権力の崩壊期に、経済的実力をもってきた町人階級が、士農工商の封建身分制にたいする反抗・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・を撮影した時、老いぼけた坊主が十字架もって出て来るんだ。反乱が起って坊主は勇敢な水兵に追いこくられ、艦橋からころげおちるところがある。エイゼンシュテインのことだから、ほんとに、老いぼけてひょろひょろな坊主見つけて来たんだって。いざ、高いとこ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・先ずツルゲーネフが七歳の一八二五年に有名な十二月党の叛乱があった。この少壮貴族・将校を中心とする叛乱の計画は一貴族の卑劣な裏切りによって悲劇的失敗をとげ、その後一時沈滞した解放運動は、四〇年代になるとモスクワ大学の研究会となって、再び若々し・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
出典:青空文庫