・・・その場合には冒されたものが、屏息 文芸に四種の理想があるのは毎度繰返した通りでありまして、その四種がまたいろいろに分化して行く事も前に述べたごとくであります。この四種の理想は文芸家の理想ではあるが、ある意味から云うと一般人間の理想であり・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・我輩はコックネーでは毎度閉口するが、ベッジパードンのコックネーに至っては閉口を通り過してもう一遍閉口するまで少々草臥るから開口一番ちょっと休まなければやり切れないくらいのものだ。我輩がここに下宿したてにはしばしばペンの襲撃を蒙って恐縮したの・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
・・・父母が何か為めにする所ありて無理に娘を或る男子に嫁せしめんとして、大なる間違を起すは毎度聞くことなり。左れば男女三十年二十五年以下にても、父母の命を以て結婚を強うることは相成らず。又子の方より言えば仮令い三十年二十五年以上に達しても、父母在・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・我が輩の持論は、今の帝室費をはなはだ不十分なるものと思い、大いにこれを増すか、または帝室御有の不動産にても定められたきとのことは、毎度陳述するところにして、もしも幸にして我が輩の意見の如くなることもあらば、私学校の保護の如き、全国わずかに幾・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
人間の腹より生まれ出でたるものは、犬にもあらずまた豕にもあらず、取りも直さず人間なり。いやしくも人間と名の附く動物なれば、犬豕等の畜類とは自ずから区別なかるべからず。世人が毎度いう通りに、まさしく人は万物の霊にして、生まれ・・・ 福沢諭吉 「家庭習慣の教えを論ず」
・・・是れは自分の意なれども父上には語る可らず、何々は自分一人の独断なり母上には内証などの談は、毎度世間に聞く所なれども、斯くては事柄の善悪に拘わらず、既に骨肉の間に計略を運らすことにして、子女養育の道に非ざるなり。一 女子既に成長して家庭又・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・ 学問に志して業を卒りたらば、その身そのまま即身実業の人たるべしとは、余が毎に諸氏に勧告するところにして、毎度の説法、聴くもわずらわしなど思う人もあるべけれども、余が身に経歴したる時勢の変遷を想回えして、近く第二世の事を案ずれば・・・ 福沢諭吉 「成学即身実業の説、学生諸氏に告ぐ」
・・・仏蘭西の政体は毎度変革すれども、教育上にはいささかも変化を見ず。その他英なり荷蘭なり、また瑞西なり、政事は政事にして教育は教育なり。その政事の然るを見て、教育法もまた然らんと思い、はなはだしきは数十百年を目的にする教育をもって目下の政事に適・・・ 福沢諭吉 「政事と教育と分離すべし」
・・・ 試に今日女子の教育を視よ、都鄙一般に流行して、その流行の極、しきりに新奇を好み、山村水落に女子英語学校ありて、生徒の数、常に幾十人ありなどいえるは毎度伝聞するところにして、世の愚人はこれをもって教育の隆盛を卜することならんといえども、・・・ 福沢諭吉 「文明教育論」
・・・ 書きたいだけ書いて、あとから名をつける癖のある私は、毎度こうした眼に会う。 いつもいつも物を考える時はきっとする様に、男みたいな額の角を人指し指と拇指で揉みながら、影の様にガラスの被の中で音も立てずに廻って居る時計だの、その前のテ・・・ 宮本百合子 「草の根元」
出典:青空文庫