・・・して必ず遺漏あるべきなれば、この法を研究するには、盲人の音学に精 ひとり医学のみならず、理学なり、また文学なり、学者をして閑を得せしめ、また、したがって相当の活計あらしむるときは、その学者は決して懶惰無為に日月を消する者に非ず、生来の習・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・故に中津の上等士族は、天下多事のために士気を興奮するには非ずして、かえってこれがためにその懶惰不行儀の風を進めたる者というべし。 右のごとく上士の気風は少しく退却の痕を顕わし、下士の力は漸く進歩の路に在り。一方に釁の乗ずべきものあれば、・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・外には活溌にして内には懶惰、台所の有様を知らず、玄関の事情を知らず、子供の何を喰らい何を着るを知らず、家族召使の何を楽しみ何を苦しむを知らず。早朝に家を出て夜に入らざれば帰らず。あるいは夜分に外出することあり、不意に旅行することあり。主人は・・・ 福沢諭吉 「教育の事」
・・・だから、これらの留置場では、理屈を云わせないために、一寸した口ごたえをしようとしても、看守はその留置人をコンクリートの廊下へひきずり出して、古タイヤや皮帯で、血の出るまで、その人たちが意気沮喪するまで乱打して、ヤキを入れた。殴る者のいないと・・・ 宮本百合子 「誰のために」
・・・ところへ外からおとずれたのは居残っていた懶惰者、不忠者の下男だ。「誰やらん見知らぬ武士が、ただ一人従者をもつれず、この家に申すことあるとて来ておじゃる。いかに呼び入れ候うか」「武士とや。打揃は」「道服に一腰ざし。むくつけい暴男で・・・ 山田美妙 「武蔵野」
出典:青空文庫