・・・長兄の万年筆は、実に太い。ソーセージくらいの大きさである。その堂々たる万年筆を、しかと右手に握って胸を張り、きゅっと口を引き締め、まことに立派な態度で一字一字、はっきり大きく書いてはいるが、惜しい事には、この長兄には、弟妹ほどの物語の才能が・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・寝るまで、せめて茶とソーセージののっかったパン位は食べたい。故に、五十カペイキ 飲食費 計 一ルーブル七十二・五カペイキ 五人だと八ルーブリ六十二・五カペイキ。エム・オー・エス・ペー・エス劇場がどんなによい上演目・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・ モスク文化象徴である石油コンロ、薬カン、人別手帖で買ったところの貴重なパンの塊、ソーセージ、――つつましき人生の全必需品がもち込まれて居るのだ。 この湯槽には、だが幸三十四度の温湯がたたえられてある。黒い東洋の髪をぬらしつつ漬って居る・・・ 宮本百合子 「無題(七)」
出典:青空文庫