・・・フォスゲンやシュワルツワルドを遠くに見て、ライン地方の低地を過ぎて行くのである。至るところの緑野にポプラや楊の並み木がある。日が暮れかかって、平野の果てに入りかかった夕陽は遠い村の寺塔を空に浮き出させた。さびしい野道を牛車に牧草を積んだ農夫・・・ 寺田寅彦 「旅日記から(明治四十二年)」
・・・かく推論の結果心理学者の解剖を拡張して集合の意識やまた長時間の意識の上に応用して考えてみますと、人間活力の発展の経路たる開化というものの動くラインもまた波動を描いて弧線を幾個も幾個も繋ぎ合せて進んで行くと云わなければなりません。無論描かれる・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・それは有名なライン河である。太古の文明はこのライン河の水脈にそって中部ヨーロッパにもたらされた。ライン沿岸地方は、未開なその時代のゲルマン人の間にまず文明をうけ入れ、ついで近代ドイツの発達と、世界の社会運動史の上に大切な役割りを持つ地方とな・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・ 夜着は十二月に出来ますが、ダラダララインは、今私の舌たらずな発音では大変言いにくくて、ダアダア、アインと聞えるそうです、一層悪いわね。 大学書林は一年一回出ていて、今あるのはそちらへすぐ送るように頼みました。 ヘルマン・ヘッセは本・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・「ここ一年以来の民自党政府のやり方には、もはや反共のラインをこえて、人間としての権利そのものへの侵犯としかみえないものがあらわれている。」「最近は、私自身の関するせまい職域の限りでも、いわゆるレッド・マークとか、学問の自由というような新しい・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ゴーグが拡まっているが、実際内部へ入って見れば、年々状態は好くなって来るし、一九二八年――まして一九三三年の生産拡張五ヵ年計画が着手されてから、個人商人の激減と工場及び凡ての官公署内の組織が社会主義的ラインに依って非常に多くのものを清算し改・・・ 宮本百合子 「露西亜の実生活」
・・・なおその上に、彼はフランス本国から二十万人を、ライン同盟国から十四万七千人、伊太利から八万人を、波蘭とプロシャとオーストリアから十一万人、これに仏領各地から出さしめた軍隊を合せて七十万人に、加うるに予備隊を合して総数百十万余人の軍勢をドレス・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
出典:青空文庫