・・・こういう男は随分世間にもあるもので、雅のようで俗で、俗のようで物好でもあって、愚のようで怜悧で、怜悧のようで畢竟は愚のようでもある。不才の才子である。この正賓はいつも廷珸と互に所有の骨董を取易えごとをしたり、売買の世話をしたりさせたりして、・・・ 幸田露伴 「骨董」
皆さん。浅学不才な私如き者が、皆さんから一場の講演をせよとの御求めを受けましたのは、実に私の光栄とするところでござります。しかし私は至って無器用な者でありまして、有益でもあり、かつ興味もあるというような、気のきいた事を提出・・・ 幸田露伴 「馬琴の小説とその当時の実社会」
・・・もちろん人々の才・不才もあれども、おおよそこれまで中等の人物を経験したるところを記せしものなり。独見もでき、翻訳もでき、教授もでき、次第に学問の上達するにしたがい、次第に学問は六ッかしくなるものにて、真に成学したる者とては、慶応義塾中一人も・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾新議」
・・・ゆえに人民の貧富、生徒の才・不才に応じて、国中の学校も二種に分れざるをえず。すなわち一は普通の人民に日用の事を教うる場所にして、一は学者の種を育つる場所なり。銭あり才あるものは、もとより今の小学校にとどまるべからず。あるいは最初よりこれに入・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
・・・皆以て身の重きを成して自信自重の資たるべきものなれども、就中私徳の盛んにしていわゆる屋漏に恥じざるの一義は最も恃むべきものにして、能くその徳義を脩めて家内に恥ずることなく戸外に憚る所なき者は、貧富・才不才に論なく、その身の重きを知って自ら信・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
出典:青空文庫