・・・かくのごとく定めた energy なるものがあらゆる変化に際して総和において変らぬというのがいわゆる勢力不滅則である。 仕事と云いエネルギーと云うのはどこまでも人間特に物理学者が便宜上採用した観念である。力という語や速度という語が世俗に・・・ 寺田寅彦 「物質とエネルギー」
・・・ エネルギー不滅論の祖とせらるるロベルト・マイアーは最もよくルクレチウスの衣鉢を伝えた後裔であった。しかし彼は不幸にしてその当代の物理学に精通しなかったために、その偉大なる論文は当時の物理学界からしりぞけられた。しかして当時の学界へのパ・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
・・・現に武蔵野の片隅に寝ていたかくいう僕を曳きずって来て、ここに永生不滅の証拠を見せている。死んだ者も恐ければ、生きた者も恐い。死減一等の連中を地方監獄に送る途中警護の仰山さ、始終短銃を囚徒の頭に差つけるなぞ、――その恐がりようもあまりひどいで・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・はっはっは、どうだ、もっともそれはおれのように勢力不滅の法則や熱力学第二則がわかるとあんまりおかしくもないがね、どうだ、ぼくの軍隊は規律がいいだろう。軍歌にもちゃんとそう云ってあるんだ。」 でんしんばしらは、みんなまっすぐを向いて、すま・・・ 宮沢賢治 「月夜のでんしんばしら」
・・・然し、愛だけはそうでなく、不死で、不滅で、同時に、或人の持つ総量に変ることないのを知った。 ○ 人間が、血縁の深さに惑わされ過ぎることを思う。いつか、人間の如何那関係に於ても、欠けると大変なのは、友情だと云う・・・ 宮本百合子 「傾く日」
・・・夫妻がノーベル賞を授与された祝賀会の講演で次のようにのべたピエールの言葉こそ、キュリー夫妻を不滅にした科学の栄光であると思います。「私は人間が新しい発見から悪よりも寧ろ善をひき出すと考える者の一人であります」と。〔一九三九年十二月〕・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人の命の焔」
羽仁五郎氏は、この真心を傾けて執筆された独特な伝記を、有名なダヴィテの像に今日見ることの出来るミケルアンジェロの不滅の生命から語りはじめていられる。「ミケルアンジェロは、いま、生きている。うたがうひとは『ダヴィテ』を見よ。・・・ 宮本百合子 「現代の心をこめて」
・・・を防衛し「人民は不滅である」ことを立証した最近の文学作品において、はっきり一つの新時代を画した。文体と様式にも著しい変化がもたらされているのである。この複雑雄大なテーマと素材を、その隅々まで描写しつくしたらば、作品は現在あるより少くとも倍の・・・ 宮本百合子 「ゴルバートフ「降伏なき民」」
・・・ 同志小林の不滅の精神は、今日われわれが正しい決議を発表し得るに至った全過程を生々と貫き、更に決議そのもののうちに燦然と輝やいているのである。 万一、決議が、同志小林の英雄的殉難を機とし、謂わばそれによって心を入れかえた常任中央委員・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・その文章で、わたしははじめてさんが愛息香織さんに戦死されたことを知り、母としての子さんは香織さんの霊が不滅であることを信じずにはいられない思いであることを知ったのだった。 子さんが宮崎龍介氏との結婚を法律的に認めさせ、香織というかぐわし・・・ 宮本百合子 「その願いを現実に」
出典:青空文庫