・・・これ他なし、幾十年もしくは幾百年幾千年の因襲的法則をもって個人の権能を束縛する社会に対して、我と我が天地を造らむとする人は、勢いまず奮闘の態度を採り侵略の行動に出なければならぬ。四囲の抑制ようやく烈しきにしたがってはついにこれに反逆し破壊す・・・ 石川啄木 「初めて見たる小樽」
・・・そうして反キリスト教同盟は「キリスト教は科学の信仰を阻止し、資本主義の手先になって、他国を侵略する」ということが、その宣言の一つである。私は原始キリスト教の精神というものが決して今日の職業化した街頭のキリスト教とは思っていない。本当に原始キ・・・ 小川未明 「反キリスト教運動」
一、反戦文学の階級性 一 戦争には、いろ/\な種類がある。侵略的征服的戦争がある。防禦戦がある。又、民族解放戦争、革命も、そこにはある。 戦争反対の文学は、かなり昔から存在して居るが、ブル・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・しかし、暴虐に対する住民の憎悪は、白衛軍を助けている侵略的な日本軍に向って注ぎかえされた。栗本は、自分達兵卒のやらされていることを考えた。それは全く、内地で懐手をしている資本家や地元の手先として使われているのだ。――と、反抗的な熱情が涌き上・・・ 黒島伝治 「氷河」
・・・ 帝国主義の侵略とか何とかいう理由からでなくとも、僕は本能的に、或いは肉体的に兵隊がきらいであった。或る友人から「服役中は留守宅の世話云々」という手紙をもらい、その「服役」という言葉が、懲役にでも服しているような陰惨な感じがして、これは・・・ 太宰治 「未帰還の友に」
・・・ことしはあひるのコロニーが優勢になって鶺鴒の領域を侵略してしまったのではないかと思われる。同じような現象がたとえば軽井沢のような土地に週期的にやって来る渡り鳥のような避暑客の人間の種類についても見られるかどうか。材料が手に入るなら調べてみた・・・ 寺田寅彦 「あひると猿」
ことしは庭のからすうりがずいぶん勢いよく繁殖した。中庭の四つ目垣のばらにからみ、それからさらにつるを延ばして手近なさんごの木を侵略し、いつのまにかとうとう樹冠の全部を占領した。それでも飽き足らずに今度は垣の反対側のかえでま・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
今年は庭の烏瓜がずいぶん勢いよく繁殖した。中庭の四ツ目垣の薔薇にからみ、それから更に蔓を延ばして手近なさんごの樹を侵略し、いつの間にかとうとう樹冠の全部を占領した。それでも飽き足らずに今度は垣の反対側の楓樹までも触手をのば・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・ そのような侵略的な宣伝が現在どこにあるかと聞かれるとすぐ適例をあげる事は困難かもしれない。しかし現在の宣伝という言葉には、いつでも、どことなしにそういう「におい」があり「影」があると言えば、それはおそらく多くの人が首肯するであろう。あ・・・ 寺田寅彦 「神田を散歩して」
・・・もっともこうした天然の敵のためにこうむる損害は敵国の侵略によって起こるべき被害に比べて小さいという人があるかもしれないが、それは必ずしもそうは言われない。たとえば安政元年の大震のような大規模のものが襲来すれば、東京から福岡に至るまでのあらゆ・・・ 寺田寅彦 「天災と国防」
出典:青空文庫