・・・どっさりの異性の知人というものが、あるいは同僚があるような公共的な生活が先ずあって、そういう土台からもっと私的なこまかい条件の加わって来る友情も生れる空気が求められるべきだと思う。異性の友情という、どことなし従来の婦人雑誌のトピック向きな空・・・ 宮本百合子 「異性の友情」
・・・ソヴェト同盟が、生産と公共的な勤労に従う男女の生活権を尊重して、十八歳以上の男女に等しく選挙・被選挙権を与えていることは、周知のとおりである。 日本の歴史は、惨憺たる進歩性の敗退の跡を示している。明治維新によって、名目上の民権が認められ・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・ところがアメリカのような国になると、電気とかいろいろな社会設備が発達しているから、家事的な労働の大部分は公共的な簡便さで解決される。つまり、たった二ドル位で電話がひけるとか、ガスや電気が大へん安い。だから電気で洗濯して電気でアイロンをさっさ・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・==総同盟系の反革命的労働者を煽動して、一定の公共物を襲撃させる。すると、直ちにそれを共産党の蜂起とデマり、鎮圧の名目で軍隊を繰り出し、市街戦で革命的労働者、前衛を虐殺し、それをきっかけに戒厳令をも布く。そのような計画が予定のうちにあるキッ・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・放送委員は公共の利益を理解し公正な判断をもっている三十五歳以上のもののうちから五人を両院の承認をへて総理大臣がこれを任命するとされている。一般の不信と疑問はこの委員選出法に集中されている。なぜならば、我々は現在の政府が一般の信頼をかちえない・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・勤労者のいろいろな才能ののばされてゆくモメントも、資本主義社会の偶然性よりはひろい確かな公共的地盤をもっています。独占資本の独裁、商業主義の独裁のもとにおける文化の悲しむべき境遇について、ロマン・ロランが闘ったように、アインシュタインが闘い・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・ 公共建築や宮殿のようなものは例外として、中流の、先ず心の楽しさを得たい為に、居心地よい家を作ろうとするような者は、此位の共力が、決して不当なものではあるまいと思います。新らしい家と云うものが、ちっとも、贅沢な、フリーボラスな気分を醸さ・・・ 宮本百合子 「書斎を中心にした家」
・・・家の中で非常に親しくしている仲であっても、公共の場所では慇懃な態度をとれとか、召使は客人の前では厳密に規律を守らせ、人目のない時にいたわってやれとか、というような公私の区別も、彼にとって算用であった。人を躾けるやり方についても、小さい不正の・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・帝国ホテルが近いから夕方にでもなれば華やかに装った富豪の妻や娘もそれに混じるであろう。公共の任務のために忙しく自動車を駆るものは致し方がないが、私利をはかるために、またはホテルで踊るために、自動車を駆るものに対しては、父は何を感ずるであろう・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
・・・この不足のゆえに公共生活の訓練が不充分であり、従ってあらゆる都市の経営が根柢を欠いている。日本人はまだ都市の公共性を理解しない、これが著者の嗟嘆の一つである。しかしこのことは否定の否定が実現せられ得るためにまず第一の否定が明白に行なわれねば・・・ 和辻哲郎 「『青丘雑記』を読む」
出典:青空文庫