・・・しかも日本には日本文学の伝統として、近代文学の確立と同時に文学者は一般官吏、実業家、軍人等の社会活動と全く切り離された別個の道或は並行の道或は対蹠をなす道を歩かざるを得ない事情に置かれて来たという事情がある。 周知の如く近代国家としての・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・ 今日のヒューマニズムが、この人生と芸術とにおいて、人間生活に及ぼす作用において、感動と情熱とは同じものでない別個のものであるという、深刻な事実を、何かの形で会得させ得るとしたら、それだけでも、日本文学にある前進の足がかりを得たことにな・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
内外の複雑な関係によってプロレタリア作家が組織を解体してから、ほぼ一ヵ年が経過した。その困難な期間に発刊されたさまざまの文化・文学雑誌は、編輯同人のグループはそれぞれに別個だし、編輯方針の細部でもそれぞれのある独自性を発揮・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・作家同盟のなかに、同伴者作家団などというものが別箇なグループをなして包括され得るという理解はなり立たぬ。作家同盟が特に同伴者「的」、或いは同盟者「的」作家を包含するという所以である。 また同伴者作家というものを考えて見ても、それは決して・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・火事と空襲とは別箇のものと十分知りながら、わたしも本郷安全説に追随していた。 ところが、一九四五年一月末日神田と本郷の一部が真先に空襲をうけた。それから五月下旬まで、毎月一回、きまって本郷の各部が爆撃をうけつづけた。丹念に、のこった部分・・・ 宮本百合子 「田端の汽車そのほか」
・・・ 戸坂氏などは、文芸批評というものが多く主観的であるという現状のままを認容した上で、それより客観性、科学性において立ちまさったものとして別個に文明批評の出現をとりあげているのである。 それとは異ってプロレタリア文学批評の分野に、『文・・・ 宮本百合子 「近頃の感想」
・・・ひとの内部から自発したものでなかったり、ジャーナリズムの文化的成長の表現としての淘汰でなかったりして、全く外部の影響で、きょうは何でも云えるというようなもののちからで消されたとあれば、それにはやはり、別個の問題がある。あるものが芸術品として・・・ 宮本百合子 「日本文化のために」
・・・自分の属している政治の組織と、文学の大衆的な組織は、おのずから別個な二つのものである。文学者たる自分が、文学の領域においてはっきり語ってよい限度と、政治団体の内部の条件からうける刺戟によって、湧き立つ精神の処理の方法を学ぶまでに、わたしとし・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・いくら職業をさがしてもないから、到頭食うために女給になったという若い女は数多く、それは現在の経済危機の増大につれ増加して来ている、別箇の問題であると思う。 良子嬢が東郷元帥の孫としてのつまらない生活の反対物をカフェーに見出したところに、・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・バルザックの聴衆はそれ独特のものであり、そのものとして申し分のないものであり、他とは別箇のもので、他と同様に生存の権利を主張し得るものである。」そして、テエヌはそのことこそ「彼の文体の癖がわれわれの生活の習慣と適合し、作家たるバルザックが公・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
出典:青空文庫