・・・では、その扱いの失敗の典型を見せられたが、ソヴェトのオペラで感服した一つのことはオペラ舞台では、演劇的に群衆が集団の力の表現として生かされていたということだ。 これはスカラ座のカルメンの舞台群衆と比べると直ぐわかる。「ゴトブ」も、こ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・最後の言葉=彼にとっての和解は、とりもなおさず 彼自身制御し得なかった彼の芸術家の歴史性の解明力に存する というのは、何と劇的な、心を打つ眺めであろう。 ツワイクは、一九一九年にこの本を出した。しかし彼はこの部分では、分析のメスを浅くす・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・――都会人の観賞し易い傾向の勝景――憎まれ口を云えば、幾らか新派劇的趣味を帯びた美観だ。小太郎ケ淵附近の楓の新緑を透かし輝いていた日光の澄明さ。 然し、塩原は人を飽きさす点で異常に成功している。どんな一寸した風変りな河原の石にも、箒川に・・・ 宮本百合子 「夏遠き山」
・・・作者は、極めて客観的に描き出すことで読者の心を打つべき残酷な劇的な座談会の場面をも、表面的に神経的に描いている。更にそれぞれの人物の描き方、人間の観方に深い異議を喚び起された。杉山平助氏が新聞の月評でこの作品に触れ、余談ではあるがと傍註をし・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・それらの欠点にもかかわらず、作者ゴーリキイの若々しく濁りない熱情、独特な誠実さにみちた調子、劇的要素によって、十分読者をひきつけ労働者の革命的行為の高貴さを理解させる力をもっている。少くとも資本主義国の支配者たちは映画化された「母」の輸入を・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・この劇的雄弁術を演技だと考えていた吾人は、デュウゼが新しい考え方と演じ方とをもって出現するに及び革命に逢着した。デュウゼにとっては動作は終局でない。真の演技の邪魔となるに過ぎない。彼女にとっては最も大なる瞬間は最も深い静寂の時である。情熱を・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
・・・ 私は偶像礼拝者の歓喜をさらに高調に達せしめる要素として、読経および儀式の内に含まれている音楽的および劇的影響をあげなければならぬ。 我々の祖先は今、適度の暗さを持った荘厳な殿堂の前に、神聖な偶像の美に打たれて頭を垂れている。や・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
出典:青空文庫