・・・漢文体なぞが行われてはいるが、それはある時代のある人々の心から、必然に生れ出た文章であって、決してわれ/\新時代の人の新しい心の表現の範とすべきものでない、われ/\は鉋迄もわれ/\の新しい思想や感情に即することによって、新しい文章を作らねば・・・ 小川未明 「文章を作る人々の根本用意」
・・・それは、文学はもとより理論ばかりの上に開花するものではないけれども、わたしたちが今日から明日へと生活の真実と文学の良心とを発展させてゆくためには、どんなに世界歴史の進行に即する正しい認識がなければならないかということである。すべてのファシズ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・三二年に国際的決定を見た日本の半封建社会は、その社会に即する半封建の思惟力と文学のよわい脚との上に、プロレタリア文学運動もろとも社会主義的リアリズムという、未来にわたって展望の長い、興味ふかい国際的な文学課題までも、崩れへたばらせてしまうこ・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・にはただ後悔が残った。 他人の製作に対する私の心持ちにも同じようなものがないとは言えない。たとえば私は四五日前に大家と称せらるるある人の感想を読んでその人の製作を考えてみた。彼は「事実」に即するつもりでいる。また実際「事実」を持っている・・・ 和辻哲郎 「転向」
出典:青空文庫