・・・千島の分だけはいろいろの困難があるので除き、また台湾、朝鮮も除く事とする。 さて Aso, Usu, Uns(z)en, Esan の四つを取ってみる。これはいずれも母音で始まり、次に子音で始まる綴音が来る。終わりのnは問題外とする。・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・実際千島カラフトの果てから台湾の果てまで数えれば、気候でもまず文化民の生活に適する限り一通りはそろっている。こういう珍しい千代紙式に多様な模様を染め付けられた国の首都としての東京市街であってみれば、おもちゃ箱やごみ箱を引っくり返したような乱・・・ 寺田寅彦 「カメラをさげて」
・・・ 測夫の一人はもう四十年も昔からこの仕事をつづけているそうで、北はカラフトから南は台湾まで足跡を印しない土地は少ないのだそうである。テントの中で昼食の握り飯をくいながら、この測夫の体験談を聞いた。いちばん恐ろしかったのは奄美大島の中の無・・・ 寺田寅彦 「小浅間」
・・・ 最近の例としては台湾の地震がある。台湾は昔から相当烈震の多い土地で二十世紀になってからでもすでに十回ほどは死傷者を出す程度のが起こっている。平均で言えば三年半に一回の割である。それが五年も休止状態にあったのであるから、そろそろまた一つ・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・しかし破壊的地震としては極めて局部的なものであって、先達ての台湾地震などとは比較にならないほど小規模なものであった。 新聞では例によって話が大きく伝えられたようである。新聞編輯者は事実の客観的真相を忠実に伝えるというよりも読者のために「・・・ 寺田寅彦 「静岡地震被害見学記」
昭和九年九月十三日頃南洋パラオの南東海上に颱風の卵子らしいものが現われた。それが大体北西の針路を取ってざっと一昼夜に百里程度の速度で進んでいた。十九日の晩ちょうど台湾の東方に達した頃から針路を東北に転じて二十日の朝頃からは・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
・・・ 一枚の五万分一図葉は、緯度で十分、経度で十五分の地域に相当するので、その面積は、もちろん緯度によってちがうが、たとえば東京付近でざっと二十七方里、台湾では約三十一方里、カラフトでは約二十一方里ぐらいに当たる。 この一枚の地形図を作・・・ 寺田寅彦 「地図をながめて」
・・・北海道や朝鮮台湾は除外するとしても、たとえば南海道九州の自然と東北地方の自然とを一つに見て論ずることは、問題の種類によっては決して妥当であろうとは思われない。 こう考えて来ると、今度はまた「日本人」という言葉の内容がかなり空疎な散漫なも・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・まして台湾以南の熱帯地方では椰子とかバナナとかパインアップルとかいうような、まるで種類も味も違った菓物がある。江南の橘も江北に植えると枳殻となるという話は古くよりあるが、これは無論の事で、同じ蜜柑の類でも、日本の蜜柑は酸味が多いが、支那の南・・・ 正岡子規 「くだもの」
・・・革命的な労働者、農民、朝鮮、台湾人にとって、飛行機は何をやったか? 猶も高く低く爆音の尾を引っぱってとんでいるわれわれのものでない飛行機。―― モスクのメーデーの光景が思い出され、自分は濤のように湧き起る歌を全身に感じた。 立・・・ 宮本百合子 「刻々」
出典:青空文庫