・・・の如き浩澣のものを、さして買書家でもないのに長期にわたって出版の都度々々購読するを忘れなかったというは、当時馬琴が戯作を呪う間にさえ愛読というよりは熟読されて『八犬伝』が論孟学庸や『史記』や『左伝』と同格に扱われていたのを知るべきである。ま・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・われわれが見るとムッソリニが閲兵式に臨んでいるニュース映画もこれと全く同格な現象のニュースとして実におもしろく見られるのである。 六 評判のフランス映画「パリの屋根の下」というのを見物した。同じく評判のドイツ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・文典の巻末にある作文や翻訳の例題と同格な応用数学的論文もなくはない。 近ごろ Heinrich Hackmann : Der Zusammenhang zwischen Schrift und Kultur in China (1928・・・ 寺田寅彦 「数学と語学」
・・・いよいよ招待日が来るとY博士の家族と同格になって観覧に出かける。これが近年の年中行事の一つになっていた。 ところが今年は病気をして外出が出来なくなった。二科会や院展も噂を聞くばかりで満足しなければならなかった。帝展の開会が間近くなっても・・・ 寺田寅彦 「帝展を見ざるの記」
・・・そうしてそれがだんだんに固定し現実化してしまって今ではもう一つの体験の記憶とほとんど同格になってしまっている。どうしてそんなことになったかと考えてみるが、どうもよくはわからない。 夏目先生が何かの話のおりに四方太氏のことについて次のよう・・・ 寺田寅彦 「俳諧瑣談」
・・・耳と目とが同じ高さにあるのは視覚空間と聴覚空間との連絡、同格化のために便利であろうと思われる。ところが光線伝播は直線的であるので二つの目が同時に対象に向かっていなければならない。従って、二つが前面に並んでいないと不都合である。これに反して音・・・ 寺田寅彦 「耳と目」
・・・ 科学的知識の進歩した結果として、科学的根拠の明らかでない云い伝えは大概他の宗教的迷信と同格に取扱われて、少なくも本当の意味での知識的階級の人からは斥けられてしまった。もちろん今でも未開時代そのままの模範的な迷信が到るところに行われて、・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
・・・平民と同格なるはすなわち下落ならんといえども、旧主人なる華族と同席して平伏せざるは昇進なり。下落を嫌わば平民に遠ざかるべし、これを止むる者なし。昇進を願わば華族に交るべし、またこれを妨る者なし。これに遠ざかるもこれに交るも、果してその身に何・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
出典:青空文庫