・・・これは江戸名所図会にも載っている、あれの直接の後裔であるかどうかは知らないがともかくも昔の江戸の姿をしのばせる格好の目標であった。 なんでも片方が「本家」で片方が「元祖」だとか言って長い年月を鬩ぎ合った歴史もあったという話を聞いたことが・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・しかし翰の持出したものは、唖々子の持出した『通鑑』や『名所図会』、またわたしの持出した『群書類従』、『史記評林』、山陽の『外史』『政記』のたぐいとは異って、皆珍書であったそうである。先哲諸家の手写した抄本の中には容易に得がたいものもあったと・・・ 永井荷風 「梅雨晴」
・・・これら座右の乱帙中に風俗画報社の明治三十一年に刊行した『新撰東京名所図会』なるものがあるが、この書はその考証の洽博にして記事もまた忠実なること、能く古今にわたって向島の状況を知らしむるものである。明治三十一年の頃には向島の地はなお全く幽雅の・・・ 永井荷風 「向嶋」
・・・ 元八幡宮のことは『江戸名所図会』、『葛西志』、及び風俗画報『東京近郊名所図会』等の諸書に審である。甲戌十二月記 永井荷風 「元八まん」
出典:青空文庫