・・・「日本共産党の外郭団体であるプロレタリア作家同盟の活動に従事し、共産主義を宣伝した」という理由によって起訴された。市ヶ谷刑務所におくられた。 執筆この時、評論集『冬を越す蕾』が入獄中に出版された。一月。「バルザックから何を・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・ 外廓を廻って叫んでも、原動力とはなりません。例えば、民法第十四、五条、第七百八十八条、七百八十九条、八百一条、第八百十三条、最も注意すべき、刑法第百八十三条等に就いて何とかなさるべきであるとは感じてもそれ等を、自分達の問題として、適切・・・ 宮本百合子 「法律的独立人格の承認」
・・・このことは近松の生れた元禄の時代が町人の擡頭と武士階級の崩壊時代ではあってもまだ身分の差別はきびしくて、封建の外郭は堅かったことを反映している。どんな卓抜な文学的天才でも、その人の生きる時代の歴史的な重みというものから、その個人だけで完全に・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・彼女の顔には絶えまなく情熱が流れている、顔の外郭は静止しているけれども表情は刻々として変わって行く。しかもその刻々の表情が明瞭な完全な彫刻的表情なのである。言いかえれば彫刻の連続である。 たとえば在来は、苦痛の時には激しい悲鳴をあげてい・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
・・・ それは外郭に連なる山々によって平野から切り離された、急峻な山の斜面である。幾世紀を経て来たかわからない老樹たちは、金剛不壊という言葉に似つかわしいほどなどつしりとした、迷いのない、壮大な力強さをもって、天を目ざして直立している。そうし・・・ 和辻哲郎 「樹の根」
出典:青空文庫